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管理組合が間違った契約しちゃった?消費者として取り消しできる?!弁護士が解説

2022-09-30

このコラムのまとめ

  • 管理組合は,以前から住民によって運営されてきたため,専門性の高い契約に関して知識が少ない事が多い。
  • 管理組合は実態としては素人であっても,消費者には当たらないという裁判例あり。
  • 分からないことは専門家(マンション管理士や弁護士)に相談してから行うべき。

管理組合は住民が運営

 マンションの管理組合は,区分所有者である住民によって組織されます。

 そして,管理組合の運営は選ばれた理事によってされます。理事は基本的に区分所有者のなかから選ばれます。

 第三者管理以外では,理事会で管理組合の様々な契約の内容を検討したり,組合に諮って契約を締結したりします。大変なご苦労ですよね。

 管理組合の理事は単にそのマンションの住民というだけですので,マンションの管理について詳しい人もいるでしょうが,ほとんどの場合,はじめはみなさん素人でしょう(理事として経験を積まれて,みなさん詳しくなっていかれます)。

 大規模修繕工事の請負工事契約や,電気の受給契約,ネット環境の一括契約など,マンション管理にかかわる様々な専門的な契約が理事の方の前に現れてきます。その当否を判断することは簡単ではありません。

 ましてや,管理組合の理事は他にお仕事をされていることが多く,仕事終わりや休日に集まって検討するなど厳しい状況の中で尽力されています。

 そんな管理組合が,間違った契約を結んで損をしてしまった場合,実質的に決定した理事達は素人なのだから,消費者契約法で取り消したり,無効になったりしないのでしょうか。

消費者契約法による取り消しや無効

 消費者契約法とは,素人である消費者が,プロである業者と知識量や経験の差によって不利益を被る場合に,契約を取り消したり,不利益な約束を無効にしたりできる法律です(消費者契約法1条)。

 例えば,重要な事項について事実と異なることを告げて契約したり(第4条1項1号),消費者にとって不利益な事実を告げなかったために誤認したり(同条2項),そうした場合に契約を取り消すことができるとしています。

 また,事業者に対する損害賠償請求権を免除させるような不利益な条項などは無効となります(8条各号)。

 管理組合も,大規模で専門的な契約について,よく分からずに契約してしまって不利益を被った場合,消費者契約法の適用を受けて契約を取り消したり無効に出来ないでしょうか

管理組合は消費者か

 そもそも消費者契約法の適用を受けるのは,消費者だけです。

 消費者とは何かにつき,消費者契約法に明確に定義があります。

 消費者契約法2条1項には,「「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。」と明確に規定されています。

 そうです。消費者とは個人であると明確に規定されていて,団体である管理組合は消費者には当たらないのです(東京地裁判決平成22年11月9日)。

 管理組合がマンション住民という個人の利益を守る為に存在する団体であり,理事も「素人」から選任されているとしても,団体である管理組合には消費者契約法は適用されないこととなります(消費者契約法逐条解説も同様)。

マンションの専門家への事前相談が重要

 結論として,管理組合は消費者にあたらないので,消費者契約法によって契約を取り消したり無効にしたりはできません。

 しかし,管理組合の理事が(少なくとも始めは)素人であることは否めません。

 そのため,重要で大規模な契約を行う場合には,前もってその内容の妥当性をマンション管理の専門家(弁護士やマンション管理士など)に相談するのが重要です。転ばぬ先の杖として,ぜひマンション管理の専門家をご活用ください!


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

これからは中古住宅も紛争処理制度が使える!住宅品質確保法・住宅瑕疵担保履行確保法の令和3年改正がいよいよ施行されます。弁護士が解説

2022-09-16

このコラムのまとめ

  • 令和3年の品確法,住宅瑕疵担保履行確保法改正がいよいよ施行される。
  • 令和4年10月1日から,瑕疵担保履行制度の対象が,瑕疵保険に加入した中古住宅にも拡大される。
  • 住宅紛争処理制度の利用が充実し,時効の完成猶予効が与えられるが,取り下げると効果を得られないので注意すべき。

住宅瑕疵担保履行制度とは家を買う時の安心を提供する制度

 家を買うというのは極めて大きな買物ですよね。誰しも失敗したくないと思うものです。

 家は大規模で複雑な構造物ですから,その全てを理解して確かめて買うことは,一般人には無理です。

 つまり,みんな一定のリスクを抱えたまま,家を購入せざるを得ません。

 一方,あまりに怖がって家を買えないとすれば,それは不幸なことですし,また家を作って売るという産業に関わっている人にも不利益です。

 そこで,新築住宅の欠陥を直す責任(瑕疵担保責任)を定め,その実現の為の視力を確保する(主として保険の加入)制度である住宅瑕疵担保履行制度を設けました。

 そして,保険加入した紛争について,住宅紛争処理制度を設置して,円滑に紛争処理できるようにしています。この制度は,専門家が関与して解決に向けて話し合える上に,手数料が1万円程度であり,極めて安価に利用できます。

改正による強化ポイントとは?

 このような住宅の瑕疵担保履行制度が,令和3年の法改正によって強化されます。

 今までは,瑕疵保険に加入した新築住宅のみが対象でした。

 令和4年10月1日から,これを瑕疵保険に加入した中古住宅も対象となることになります。

 また,住宅紛争処理によって時効の完成猶予効が付与されますので(令和3年9月30日施行),時効完成間近でも,裁判所では無く住宅紛争処理制度(ADR)を選ぶことが可能になりました。

拡大対象となる保険の種類

 今回拡大される保険は,既存住宅等に係る瑕疵による損害を填補する為の任意保険で,2号保険と言われています。

 2号保険は任意保険であり,様々な商品がありますが大きく二つの種類があります。

 一つは,リフォーム瑕疵保険や大規模修繕瑕疵保険などの請負契約タイプ。もう一つは宅建業者または個人間の中古住宅売買における瑕疵保険である売買契約タイプがあります。

 特に,宅建業者による既存住宅売買に関する瑕疵保険が近年大幅に伸びています。

時効の完成猶予効の注意!取下では効果が無い

 あっせんや調停が打ち切られた場合は,通知を受けて1か月以内に提訴すれば,時効の完成猶予については,あっせん又は調停の申請の時に訴えの提起があったものとみなされます。

 しかし,申請人が取り下げたり,そもそも不当な目的の申請として調停がされなかった場合には該当しないので注意しましょう。

 また,そもそもADRの目的となった請求と,裁判上の請求が同じなのかどうかは事案ごとに裁判所が判断することになりますので,念のため注意しましょう。


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

ヤバイ採用面接!不動産買わないと就職できない?マンション購入が消費者契約法で取り消し!弁護士が解説

2022-09-02

このコラムのまとめ

  • 就職に必要だとしてマンションを購入させた売買契約が,消費者契約法4条3項3号イにより取り消された事例。
  • 売主は直接は不安をあおる告知自体は発していなかったが,評価額1200万円程度の物件を約3000万円で売って不相当に過大な利益を得た点などが,売主の関与を認定する一つの論拠となった。
  • 就職するのに自宅不動産の購入は不要であり,慎重に行動するべき

持ち家はある種のステータス・・・でも就職に必要?

 マンションであれ,一戸建てであれ,持ち家というのは一つのステータスなのだろうと思います。

 しかし,家を持っていることが,就職の条件になるでしょうか?そんなことは普通ありえないですよね。

 でも,言葉巧みに,不動産買わないと採用できないよ!と言われたら・・・。普通は信じないんでしょうけども,社会経験の少ない人だと勘違いしてしまうことはあるかもしれませんね。

 そんな場合,買ってしまった人は契約を取り消せるでしょうか。

消費者契約法による取り消し

 消費者契約法は,詐欺などの様々なトラブルに際し,消費者を保護する法律です。最近は霊感商法の関係で話題になってますね。

 この法律を使って,消費者は,一定の要件のもとに,締結してしまった契約を取り消すことが出来ます。

不安をあおる告知(消費者契約法4条3項3号)の要件

 消費者契約法では,不安をあおるような話をして契約させた場合に取り消すことができます。詳しい要件は以下のとおりです。

・当該消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから、次に掲げる事項に対する願望の実現に過大な不安を抱いていることを知りながらその不安をあおり裏付けとなる合理的な根拠がある場合その他の正当な理由がある場合でないのに、物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものが当該願望を実現するために必要である旨を告げること

   進学、就職、結婚、生計その他の社会生活上の重要な事項

   容姿、体型その他の身体の特徴又は状況に関する重要な事項

・上記の行為をしたことにより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたとき

 結構複雑です。ごく簡単にすると,世間知らずに乗じて,進学や就職,結婚のためにはこれを買わないとダメだよ,とか,痩せる為にはこのコースに申し込まないとダメ!のような,根拠も無いのに不安にさせて契約させるような場合には,取り消すことが出来るのです。

類似の裁判例

 本件の事例に類似した裁判例があります(東地令和4年1月17日判決)。

 この裁判例では,①Xは26歳で大卒後3年程度運輸会社に勤務した程度の社会経験しかなく,自動車の購入すらしたことが無かった者であったこと,②A社への就職内定を得る為になんら必要で無かった3000万弱の住宅ローンを組んでまでマンション購入したこと,から,社会経験が乏しく,就職という願望の実現に過大な不安を抱いていたと認定されました。

 また,A社との面接において,XはA社担当者からアピール力に欠けていると言われ,さらに同席していた転職支援のB社担当者からも,マンションを購入してでも入社したいという意欲を示せと言われました。そして,後日A社の関連会社で不動産会社であるC社との面談前にも,A社担当者から,マンション購入の意思があると言うように助言されました。その後も,三社の担当者から言われるままに,Xは売主Dとの契約締結しました。

 そもそも就職するに際してマンションを購入する必要など皆無であり,A,B,C社はなんら正当な理由が無いのに,就職にはマンション購入が必要である旨を告げ,これによって困惑したXはDとの不動産購入契約を締結したと認定されました。

告知した者と契約者がちがう場合

 さて,この裁判例で問題となったのは,上記の不安をあおる告知自体に,売主Dはその場に参加していなかったことです。契約当事者はDなので,Dが不安をあおる告知を行っていないと取り消せません。

 しかし,常識的に考えて,上記認定のような手法で契約させるようなグループであるならば,売主が全くの無関係というのは考えにくいことです。

 この点,上記裁判例では,以下のように判断しました。

 まず,当該マンションの価値が1200万円程度との鑑定結果が出ており,新築時も2000万円程度であったこと,前所有者は1300万円程度で売りに出していたことを認定し,約3000万円で売却した売主Dは不当に過大な利益を得たことを指摘します。なお,リフォームすれば3000万円程度であるとの反論には,当該マンションはリフォームしていないことを指摘して排斥しています。

 さらに,就職の紹介会社にすぎないB社や採用するかを決めるにすぎないA社の担当者が内見に同行したり,契約締結に深く関与したことについて,極めて不自然と断じました。

 そして,過大な利益を受ける売主DがAないしCによる勧誘行為に関与していなかったとは考えがたいと述べています。

 さらに,売主Dの責任免除などを定めた公正証書をC社の指示で作成したこと,XがC社からD作成のチラシ(リノベーション無しで3000万円)を交付されたが,D社は別の相手にはリノベーション済みで3000万円とするチラシを交付していたことなど,売主Dの勧誘への関与を推認させる事情を指摘しました。

 その他の事情も考慮し,裁判所は売主D社も勧誘に関与していたことを認定し,契約の取消しを認めました。

まず相談してから行動しましょう

 就職を餌に不動産を買わせるなんて,多くの人にとっては「そんな馬鹿な」と思われる事例かもしれません。

 さすがにこんな場合には多くの人が「おいおい,ちょっと待てよ」と思うでしょう。

 しかし,分からないことは人それぞれたくさんあります。分からないことについて勧められた時に迷うことはだれしもあるでしょう。そんなとき,少し立ち止まって,自分よりも詳しい人に相談することが身を助けることになります。特に不動産購入のような重大な契約をする前には十分に気をつけましょう。


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

急にピアノが弾けない!細則の変更でも「特別の影響」で承認が必要か?弁護士が解説

2022-04-08
急にピアノが弾けない!細則の変更でも「特別の影響」で承認が必要か?弁護士が解説

このコラムのまとめ

  • マンションの規約の設定変更等には,区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会決議が必要。
  • また,その変更等によって特別の影響を受ける区分所有者の承諾も必要になる。
  • 特別の影響を受けるかどうかは,マンションごとの事情を丁寧に検討する必要がある。

急にピアノを弾いてはいけなくなった

 マンションでは,様々な方が住んでいます。

 中には,ピアノが弾きたくて入居した方もいるでしょう。

 今まで認められていたピアノの演奏が,夜8時以降は禁止されてしまったら、当然ですがとても困った状況になります。

 マンションで突然そのようなルールが出来た場合,ピアニストとしては何か反論できるでしょうか。

規約変更による「特別の影響」

 マンションの規約を設定,変更等する場合,区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会決議が必要です(区分31①)。

 4分の3以上の賛成というのはそもそも大きなハードルです。

 さらに,31条1項後段は,その規約変更等が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべき時は,その承諾を得なければならない。」とされています。

 つまり、規約変更等には,特別の影響を受ける区分所有者の承諾まで必要なのです

 どういう場合に「特別の影響」があると言えるのでしょうか。裁判所では,「規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該区分所有関係の実態に照らして,その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」とされています。

 まとめると,特別の影響はないとして規約変更等が有効となる要件は,①規約を変更等する必要性があること,②規約の変更に合理性があること,③変更等による不利益が受忍限度内であること,であるといえます。

 反対に,上記①から③の一つでも満たさない場合には,特別の影響を受ける者の承諾が必要です。

規約の変更ではなく,使用細則の設定・変更ならどうか?

 ところで,ピアノの演奏に関する規制などは、通常,管理規約自体では無く,その下位規範といえる「使用細則」にて規定されることが多いでしょう。

 通常,使用細則の設定・変更については,総会の過半数で決議されています。

 使用細則の設定・変更の場合,規約自体ではないため,上記の区分31条1項の適用は無く,過半数で決められるし,特別の影響を受ける者の承諾も不要であるようにも思われます。

 この点,楽器の演奏時間を夜8時までとする細則を過半数決議かつ承諾無しで行ったことの有効性が争われた東京地裁令和2年6月2日判決(以下「本件判決」といいます。)では,以下のように判断しました。

 まず,細則における楽器の演奏禁止の条項設定は,必ずしも規約で行うことが法律上求められていません。そのため,細則で演奏禁止を設定したこと,これを過半数決議で行ったことは,区分31条1項前段に違反しないとしました。

 一般的に,楽器の演奏時間の制限などは使用細則で設定されることが多く,この点では常識的な判断といえましょう。

 では,使用細則の設定は規約の変更等ではないのだから,特別の影響を受ける者の承諾も不要でしょうか。

 この点では,裁判所は,たとえ使用細則であったとしても,区分31条1項後段を類推適用して,利害の調査性を図るべきだと判断しました(最高裁平成10年10月30日第二小法廷判決・ 民集52巻7号1604頁参照)。

特別の影響があったか

 特別の影響があるかどうかは,個々の事案によって異なってきます。

 まず,ルールを設定する必要性は,マンションごとに違うでしょう。一般的に,騒音を生じかねない楽器の演奏時間についてなんらかの制限を設けることは,必要性が認められやすいでしょう。

 次にルールの合理性ですが,一般的な演奏時間を十分確保したものであれば,合理的であると認められる場合もあるでしょう。

 しかし,この点こそまさにマンションごとに千差万別なのです。

 本件判決では,マンション自体がコーポラティブマンション(入居者が組合を作って,自分たちの要望に添ったマンションを建築するもの)であり,遮音性や防音性能にこだわって,演奏が自由に出来ることを前提に設計施工されたものでした。そうした事情から,竣工当初から楽器の演奏が容認されていました。また,竣工後も,騒音の苦情がでるたびに多額の費用をかけて追加の防音工事を行っていました。

 また,夜8時までの演奏とすると,一般的な社会人は家に帰るまでに8時を過ぎることもあるでしょうから,必ずしも演奏する人に配慮した時間設定とは言えません。

 そもそも,音量について考慮すること無く一律に演奏を禁止する内容でもあります。

 こうしたことから,本件判決では,使用細則を設定した総会決議の合理性が否定されました。

 さらに,本件判決では,原告がプロのピアニストであったこと,さらに趣味のフルートでもレッスンを受けていたこと,当初は自由に演奏できていたこと,防音工事に多額の費用をかけたこと,などを指摘して,演奏を制限されることの不利益が大きいと判断しました。

 結論として,本件判決では,「特別の影響を及ぼすべきとき」にあたるとし,原告の承認を得ていない総会決議は無効であるとしました。

個別のマンションごとに検討することが重要

 本件判決では,コーポラティブマンションであったこと,当初から自由に演奏できたこと,プロのピアニストであったことなど,様々な特別な事情がありました。なので,「演奏禁止の使用細則の設定がいつでも特別の影響を及ぼすべきとき」にあたる」というわけではありません。

 特別の影響を受けるかどうかは,マンションの個別事情,ルールの規定ぶりなど具体的な事実を検討して判断する必要があります


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

工事業者が破産した!工事完了していないのに報酬を支払う必要があるの?違約金で相殺できないか?弁護士が解説

2022-03-25
工事業者が破産した!工事完了していないのに報酬を支払う必要があるの?違約金で相殺できないか?弁護士が解説

このコラムのまとめ

  • 請負工事の契約は、仕事が未完成であれば代金を払う必要は無い。
  • 複数の請負契約のうち、完成した工事と未完成の工事がある場合、破産管財人から完成した工事の代金を請求されても、「前に生じた原因」であれば、未完成の請負契約に規定していた違約金債権と相殺することができる。
  • ただし、全く無関係の契約でも相殺できるのかは疑義が残る。

工事が業者の破産でストップしたら

 あなたが自宅の新築工事を工事業者にお願いしていたとしましょう。

 ある程度までは工事が進んだのですが、その家が完成する前に、工事業者が破産してしまいました。

 この場合、当然ですがとても困った状況になります。

 ひとつには、単純に工事が未完成のままになってしまう、家ができあがらないという問題ですね。

 もう一つは、工事代金を支払う必要があるかという問題です。

工事が未完成なら工事代金は払わなくてよい

 まず、こうした建築工事は請負契約ですが、請負契約は工事が完成して引渡しをしないと報酬債権が発生しません(民632,633,624①)。

 なので、未完成であれば、工事代金は払わなくてよいのです。

未完成の工事の違約金で、完成済の工事代金と相殺できる?

 また、例えばあなたが分譲業者で複数の建物の建築工事を発注していた場合、例えば4つの新築工事を発注していたけれど、一つしか工事が完成していない状況で工事業者が破産したとします。

 その場合、基本的には、4つの請負契約があることになります。

 そのうち一つは完成しているので、工事代金を支払う必要があります。

 そして、ほかの3つの契約については工事が完成していないので、代金は支払い不要です。

 さて、上記の場合に、破産した工事業者の破産管財人から、あなたは完成した工事の代金を請求されたとしましょう。

 これは支払わざるを得ません。

 一方で、未完成の工事の請負契約に、仕事が完成しなかった場合の違約金が規定されていたとしましょう。

 この場合に、未完成の工事の契約に基づく違約金と、完成した工事の代金とを相殺することはできるでしょうか

 このことが争われたのが、最高裁令和2年9月8日判決です。

破産法では、支払停止があったことを知る前に生じた原因なら相殺できる

 この事件は、相殺できるかという点に、破産法の規定が絡んできます。

 すなわち、破産法では、「支払の停止があったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合には、相殺が認められます(破産法72②(2))。

 単純に本件をみると、工事業者が支払停止(大雑把に言えば、支払や履行ができなくなって事実上活動がストップすることです)よりも前に、未完成で終わった工事契約は締結されていますので、「前に生じた原因」に基づくとして相殺できそうですね。

「前に生じた原因」と言えるには、請求を求められている債権と同じ契約から発生している必要があるのか?

 ところで、元々工事契約は4つありました。そのうち一つの契約分だけが完成して代金が発生しています。他は未完成の契約です。

 ここで、違約金債権は、この未完成の契約から発生しています。つまり、代金が発生している契約は(完成しているので当然)違約金は発生していませんね。

 このように、管財人が請求してきた代金債権の発生した請負契約と別の契約から発生した違約金債権であっても、「前に生じた原因」に基づくとして相殺ができるのでしょうか

 それとも、前に生じた原因」と言えるには、請求を求められている債権と同じ契約から発生している必要があるのでしょうか。

最高裁は、相殺を認めた

 素直に条文を読めば、相殺が同じ債権から発生している必要がある、などとは書いていません(民505①)。

 ところが、破産などの危急時には、相殺するのに牽連性(相殺に使う債権が同じ契約関係から生じていること)が必要とする学説が有力だったのです。この考え自体は、金融機関など相殺できる債権を予め用意できる強い立場の債権者によって先んじて債権回収が行われること、そのことによって一般の債権者が比べると不利益を被ることに対応したものであって、説得力のあるものです。

 裁判でも、一審判決は相殺を認めましたが、高裁判決は、同一の債権から生じていないので相殺の期待が合理的では無いとして「前に生じた原因」にあたらないと判断し、相殺を認めませんでした。

 最高裁はまず、以下のように過去の判例最高裁平成26年6月5日判決)を引用して、破産法72②(2)の「前に生じた原因」に該当する場合は「相殺の担保的機能に対するその者の期待は合理的」であって破産手続の趣旨に反しないと判断しました。

 そして、「各未完成契約に共通して定められている本件条項は」「破産会社が支払停止に陥った際には」違約金との相殺によって「一括して清算することを予定していたものと言うことができる」と認定し、「同一の請負契約に基づいて発生したものであるか否かにかかわらず、本件各違約金債権をもってする相殺の担保的機能に対して合理的な期待を有していた」とし、破産手続の趣旨に反するものでは無いと判示しました。

 つまり、別の債権から発生していても、相殺は可能なのです。

相殺の原則に立ち返れば、相殺に制限は無い

 元々、条文には、同一の契約から生じなければならないという規定はありません。

 ですから、相殺の原則に立ち返れば、危急時であっても相殺に牽連性という制限は無いはずです。

 その点では、最高裁は条文を素直に適用してものといえます。

 とはいえ、最高裁も、複数の契約だが一括しての処理を予定していたと認定していますので、全く無関係の契約でも同じように相殺ができるのかはやや疑問が残ります

 つまり、全く無関係の契約から生じた違約金債権による相殺は、相殺権濫用として認められない可能性もあるでしょう。


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

交通事故で賠償金の分割払いはできる?弁護士が解説

2022-03-18
交通事故で賠償金の分割払いはできる?弁護士が解説

このコラムのまとめ

  • 交通事故の賠償金は一括払いが基本。
  • 後遺障害逸失利益の事案で、被害者が求めた場合、場合によっては定期金賠償が認められる。
  • 加害者が分割払いを求めることは原則としてできないが、場合によっては認められる。
  • 分割払い中に被害者が死亡しても、決められた分は支払わなければならない。

賠償金はどうやって払う?

 交通事故で相手にケガをさせたり、車を壊したりした場合に、あなやは賠償金を払うことになるでしょう。

 その時、普通は無制限の任意保険に入っているでしょうから、決まった賠償金が高くて払えないということはあまりないでしょう。

 そして、交通事故の賠償金は、普通、一括で支払わなければなりません

 仮に何千万円もの賠償を命じられたら、一括で払うのことは困難でしょう。そのためにも自動車保険(任意保険)は必ず加入した方がいいですね。

分割払いできるか?

 この賠償金を分割払いすることはできるでしょうか。

 被害者とその内容で示談できれば可能ですが、判決で一括払いを命じられたら、これを分割で払うことはできません。

 では、被害者(原告)は判決で分割払いを求めることは可能でしょうか。

 ここで、被害者が重い後遺障害を負った事件で、後遺障害による逸失利益について分割払い判決(定期金賠償といいます)ができるかが争われた事案が参考になります(最1 小判令和2・7・9 民集74 巻4 号1204 頁)。

 定期金賠償制度は、変更判決制度(民訴法117条)と相まって、長い期間に渡って被害が続いて、状況が変化する可能性がある事件では、状態が悪化するにせよよくなるにせよ、それに対応して賠償額を変更できる可能性があります。

 重い後遺障害によって働けなくなったことの賠償である逸失利益の場合は、特に被害者が若い場合にはよりよくなる可能性だってあるので、定期金賠償を認めることは公平であると考えられます。

 この判例は、

  1. 原告が定期金賠償を求める旨の申し立てをしていこと
  2. 不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められること

 の二つの条件を満たせば、後遺障害逸失利益の分割払い判決(定期金賠償)は可能であると判断しました。

 この裁判では、被害者が事故当時まだ4歳であった(つまりこの後長く生きる可能性がある)こと、高次脳機能障害という重い後遺症であったことから、二つ目の要件である「相当性」が認められるとして分割払い判決(定期金賠償)を認めました。

加害者(被告)が分割払いを要求できるのか

 ところで、加害者の方が分割払いを求めることはできるのでしょうか

 東京高判平成15・7・29 は、将来の介護費用につき、原告が一時金賠償を求めたにもかかわらず、被告の主張した定期金賠償を採用しました。

 場合によっては、裁判所が認めてくれることもあるでしょう。

分割払いをしてるうちに被害者がお亡くなりになったら、逸失利益はもう払わなくて良いの?

 後遺障害による逸失利益は、就労可能期間(67歳まで)に得られたであろう収入を労働能力を喪失した割合を考慮して決められます。

 そして、定期金賠償というのは、原則的に被害者が死亡したときに打ち切られるのが原則の制度です。

 では、分割払いをしている途中で被害者が死亡した場合は、そこで逸失利益の支払は終わるのでしょうか

 例えば介護費用などは、死亡時点で支払は終わると考えられています。

 この判例(最1 小判令和2・7・9 民集74 巻4 号1204 頁)では後遺障害による逸失利益の支払が終了するかが争われました。

 最高裁は、特段の事情が無い限り、就労可能期間の終期よりも前に死亡しても、支払は継続しなければならないと判断しました。

 最高裁判所は、定期金賠償制度の性質論よりも、交通事故による重傷者と死亡者とのバランスを重視しました。

残された問題

 分割払い判決ができるかは、未だ全部の場合に可能と判断されてはいません。

 この判例では後遺障害逸失利益の賠償を分割支払にできるかが争われましたが、例えば、被害者が死亡した場合の逸失利益に対して定期金賠償ができるのかは、未だ最高裁判所は判断していません。

 例えば、一家の大黒柱が死亡した場合には、状況によって、一括払いしてもらわないと困る事案があるかと思います(子の進学費用が重なったりと、大きな出費が一度に生じることなど)。

 そもそも、死亡した場合には将来の状況の変化がありえないため、定期金賠償にするメリットがありません。

 私見としては、死亡逸失利益の場合は一括払いがふさわしいと考えます。


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

ADRでも時効をストップ!住宅紛争審査会がさらに便利に!弁護士が解説

2022-03-11

このコラムの要約

 住宅に関する紛争を解決する手段としてADRである住宅紛争審査会があります。

 手軽に利用できるこの制度ですが、令和3年の改正で、①住宅紛争手続でも時効の完成猶予効が付与されます。

 また、②対象が拡大され、住宅リフォームやマンションの大規模修繕の瑕疵保険も対象となります。

 より選択しやすい制度となったADR、住宅紛争審査会のご利用については、お近くの弁護士会にご相談ください。

住宅トラブルの解決に手軽なADR

 建築のミスや代金を巡るトラブルなど、住宅に関する紛争は数多く発生しています。

 トラブルを解決するための最終手段は裁判です。しかし、それよりも簡単に、「ちゃんとした人のちゃんとした意見」を聞ければお互い納得できることがありますよね。

 そうした要請に応える、裁判では無いけどもトラブルを解決するための手続、ADRが近年充実しています。

 各弁護士会が運営している住宅紛争審査会も、住宅紛争を解決する代表的なADRで、比較的活発に利用されている手続です。

消滅時効が止まらない!ADRの問題

 以前から、住宅紛争審査会によるあっせんや調停の手続では、消滅時効が問題となっていました。

 欠陥住宅による損害も権利である以上、いつかは消滅時効が完成して、請求できなくなってしまいます。

 時効の進行を止めるには、訴訟の提起、裁判所に訴えることが必要です。一旦提訴すれば、時効の進行は止まり(民法147条1項)、判決なりで最終的に解決されることになります。

 一方、ADRである住宅紛争審査会の手続は裁判と同じような機能を果たすのですが、住宅紛争審査会にあっせんや調停を申し立てても消滅時効の進行は止まりませんでした。

 そのため、時効の完成間近の事件では、ADRを利用することができず、はじめから訴訟を選択したり、手続途中に時効がせまってきた場合は別途時効完成猶予の合意を取り付けたりせざるを得ませんでした。

住紛でも消滅時効がストップするように!

 こうした不便を解決するため、令和3年5月28日に住宅品確法および住宅瑕疵担保履行法が改正され、住宅紛争手続においても時効をストップする効果(完成猶予効)が発生するようになりました。

 具体的には、住宅紛争審査会への手続開始時に時効が完成していなければ、その手続が解決の見込みなしとして不成立におわった後1か月以内に裁判所に提訴すれば、ADRの手続申請時に訴えの提起があったとみなされるため、時効完成後の提訴でも消滅時効に関わらないようになりました(ざっくり書いたので、より詳細な規定は品確法73条の2、保険付き新築住宅に関する住宅瑕疵担保履行法第33条2項を参照)。

 この改正の施行日は令和3年9月30日です。すでに係属中の事件にも適用されます(改正法付則第3条、第4条)。

 ただし,時効の完成猶予効が生じる範囲について,ADRの目的となった請求内容と,訴訟上の請求が同一なのかどうかで問題が生じることもあるでしょう(請求の特定)。同一なのかどうかは裁判所が事案ごとに判断することになります。

住宅リフォームも対象!

 また、今まで対象では無かった住宅リフォーム(瑕疵保険)やマンションの大規模修繕(瑕疵保険)、既存住宅瑕疵保険も対象になりました。

 ADRの利用は各瑕疵保険への加入が条件となりますが、いずれも工事発注時に業者に加入を求めることで解消が見込まれます。

住宅紛争処理手続のために4月以内の期間で訴訟手続を中断することが可能に

 すでに訴訟で争っている事案でも,当事者双方が共同で申し立てれば,裁判所は訴訟を一時中断して住宅紛争処理手続に委ねることができるようになりました(品確法73条の3)。その期間は4か月以内です。

 これによって,既に訴訟になっていても紛争処理手続が使えることになり,より柔軟な解決ができるようになります。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

老朽化マンションを建て替えろ!政府が建替えに必要な要件緩和を検討!でも実は敷地売却が重要!?弁護士が解説

2022-03-04

マンションの建替えは難しい

 地震を筆頭に、災害の多い我が国日本。そのため建物の強靱化は極めて重要な課題です。

 特に耐震性能の不足するマンションは、これまでずっと建替えの必要性が叫ばれてきました。

 しかし、マンションの区分所有という特殊性が、建替えを阻んできた歴史がありました。

マンションはみんなで所有しているので、みんなで決めなければならない

 マンションはその特徴として、建物を住民みんなで所有しています。

 詳しく言うと、各部屋(「専有部分」といいます)はそれぞれの持ち物ですが、廊下やエレベーターなどみんなで使う部分(「共用部分」といいます)はみんなで所有しています。

 共用部分を含む建替工事は、基本的には全員一致で決めなければなりません。

 しかしそれではあまりに面倒なので、区分所有法は総区分所有者の5分の4の賛成で建て替えられるとし、要件を緩和しています。

 なお、建替えをあきらめて敷地ごと売り払って分配しようとすると、民法の原則に戻って、全員一致でないとできません。なお,耐震性がない,あるいは外壁等の剥落により危害が生じる恐れのあるマンションは要除却認定対象となって5分の4での合意に緩和されています。

 建替えの賛成数が緩和されたとはいえ、5分の4の賛成を得るのは簡単ではないです。要除却認定されてもやはり5分の4の賛成が必要です。

 そのため、多くの建替えるべきマンションにおいて、住民間で建替えの機運が高まっても、あえなく頓挫してきました。

マンションのスラム化

 近年、建物の老朽化にともない、マンションの所有者が不在となっている場合があります。

 住民全員で所有しているというマンションの特性上、建物の管理およびその費用は区分所有者が負担します。

 ですので、人がいなくなる(区分所有者自身はどこかに存在しているのですが、管理に参加したり管理費を支払わなかったりする状態です)ことは、マンションの管理状態に悪影響を与えます。

 人がいなくなると、管理費が足りなくなったり、管理組合が運営できなくなったりして、建物のメンテナンスが滞り、悪化した住環境を嫌ってさらに住民が離れます。

 こうしてマンションのスラム化が進行してしまいます。

 さらに、相続が発生して、現在の所有者が誰なのか分からないこともあります。

 このようなスラムマンションは、客観的には建替えの必要性は高いのですが、建替えの同意は取れるでしょうか。建替えに対する元々厳しい5分の4以上の賛成数が、不在者がいることでさらにクリアが厳しくなります。

 スラム化によって、事態の解決がどんどん遠くなっていますね。

賛成数を4分の3に引き下げ

 こうした状況に鑑み、政府はマンション建替えの賛成要件を4分の3に引き下げる方向で検討しているとの報道がありました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA112K70R11C21A1000000/?n_cid=NMAIL007_20211210_A&unlock=1

 これにより、主に賛成要件で滞っていた建替手続が促進されることになると思います。

問題は建替資金

 実は、賛成要件を多少引き下げても、いまだ建替えの最も大きな障害が残っています。

 それは、建替えの資金です。

 マンションの建替えは、あたらしい建物を建てるのですから、当然に莫大な建築費がかかります。

 建築費を住民全員で負担するとしても、要するに新築マンションを買うようなものですので、何千万ものあらたな出費(場合によっては住宅ローンを組む必要があるでしょう)をしなければなりません。建替えには簡単に賛成できないのです。

 では今までの建替えはどうやって資金を賄っていたかというと、建物を今までよりも大きく建て替えて、新しくできた部屋(「余剰床」と言われています)を販売することで、従前からの区分所有者の立替費用を賄ったり、低く抑えたりしてきたのがほとんどです。

 これは、建物の建築条件(建ぺい率や容積率など)が竣工当時よりも緩和され、より高い建物、広い建物が建てられるマンションの建替えであることが前提条件になります。

 こうしたマンションであれば、従来の区分所有者は、究極的にはタダで新しいマンションに住み替えられるわけですから、住民はみんな建替えに賛成します。

 今までデベロッパーが行ってきた建替えはこうした比較的「イージー」な案件でした。

 しかし、建て替えても余剰床がほとんどない、あるいは全く無い、さらには耐震性能を確保するために部屋が今までより小さくなるといった「ハード」な案件は建替えがすすまずに残されてしまっているわけです。

敷地売却が出口になるかも

 今回、政府は敷地売却についても4分の3の賛成で可能とする方向で改正しようとしているようです。

 敷地売却は、従来、全員一致でないとできなかったことです。

 上記の建替資金の問題がクリアできないならば、危険な建物が存在することを解決するには、建物を取り壊して敷地を売却するしかありません。

 今回、政府が敷地売却の要件を緩和してきましたが、私はこちらが本命なのではないかと思います。

 さらに、不明者を賛否のカウントからはずすことも検討しているようですので、敷地売却はかなりやりやすくなる可能性があります(ただし、不明者については改正されない可能性もあるでしょう)。

 ご自身の所有するマンションの行く末を案じておられる方は、ぜひ法改正の動向を注目してください。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

マンション管理の適正化!令和2年改正法を弁護士が解説

2022-02-25
マンション管理の適正化!令和2年改正法を弁護士が解説

このコラムのまとめ

  • 1 マンション管理適正化法が令和2年に改正され,令和4年4月1日から施行されます。
  • 2 マンション管理適正化推進計画制度ができました。
  • 3 管理計画認定制度ができました。
  • 4 市区等がマンション管理組合に助言・指導・勧告できるようになりました。

マンションの老朽化を防げ!マンション管理適正化法が改正

 戦後,マンションが特に都市部の主要な居住空間として発達してきました。

 一方,竣工後40年を超えるマンションも,現在既に100万戸以上あることが分かっており,これはマンションストック総数の実に15%を占めています。

 これらの高経年マンションは,外壁や躯体に多くの問題を生じやすい一方,住民の高齢化が進んで管理が行き届かないという悪循環にあります。

 こうした高経年マンションの管理を良くするため,マンション管理適正化法が令和2年に改正され,令和4年4月1日から施行されます。

管理適正化推進計画

 まず,市区等は,国の定めたマンション管理適正化指針に基づいて,マンション管理適正化推進計画を定めることができることになりました。これは地域独自の事情を汲んだものとすることができます。

マンションの管理計画認定制度

 次に,推進計画を定めた地方公共団体は,一定の基準を満たすマンションの管理計画を認定することができます。

 個々のマンション管理組合が自治体に管理計画の認定を申請し,これが通れば,管理の優良なマンションとしてお墨付きを得ることができます。具体的メリットとしても,リフォーム融資で金利の引き下げ措置を行うことが検討されています(フラット35)。

管理の適正化のために市区等が助言・指導・勧告することに

 また,自治体は,マンション管理の適正化のために助言・指導し,不適切管理に対しては勧告を出せることとなりました。

 例えば,総会が開催されていない,管理者等が定められていない,管理規約が存在しない,管理費と修繕積立金の分別管理ができていない,そもそも修繕積立金がないなどの場合が対象に考えられます。

 ご自身の所有するマンションの管理に頭を悩まされておられる方は多いでしょう。今回の改正は,適正な管理に対してインセンティブを与え,かつ不適切管理を厳しく扱うものです。今改正を適正管理へのきっかけとして頂ければと思います。

 気になる点がありましたら,ぜひお気軽にご相談ください。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

交通事故の逸失利益、減収がなくてももらえるの?弁護士が解説

2022-02-04

この記事のまとめ

交通事故で身体にダメージを負っても、実際に収入が減らなければ逸失利益がもらえないのが原則です。

ですが、自分の特別な努力で減収を防いだなら、それを具体的にアピールすることで裁判所が逸失利益を認めることがあります。

がんばって働いたら収入が減らなかった!

 交通事故で身体に被害を受けると、おもうように働けなくなることがあります。

 その結果、収入が減ることもあります。

 このような事故が無ければ得られた利益を「逸失利益」といいます。

 当然逸失利益も交通事故の損害なので、加害者に請求したいところです。

 ところが、身体がつらくても頑張って働いた人の中には、収入が減らなかった人もいるでしょう。

 この場合にも、逸失利益はあるのでしょうか。

裁判所は差額を払うべきと考えている

 後遺症によって収入が減る逸失利益については、二つの考え方があります。

 ひとつは、働く能力自体が損なわれたのであるから、喪われた労働能力自体が損害であるという考え方です(労働能力喪失説)。

 自賠責保険の後遺障害等級はこの考え方を基にしています。

 後遺障害等級は、実際に減収が発生している場合には、裁判所はこれをベースに損害を認定します。

 しかし、裁判所は基本的には、あるべき収入と現実収入との差額を損害とみています(差額説)。

 ですので、等級認定があったとしても、実際に収入減少しなかった場合には逸失利益を認めないのが原則となっています(最判昭和42年11月10日民集21巻9号2352頁)。

 一方、仮に収入が減らなくても、特別の努力をしたことによって収入が減らなかった場合や、昇級や転職に不利益が生じるおそれがある場合などの特段の事情がある場合には逸失利益を認めるとの判断をしました(最判昭和56年12月22日民集35巻9号1350頁)。

どんな場合に逸失利益が認められるの?

 では、上記の「特段の事情」とはどのような場合でしょうか。

 今までの裁判例では主に以下のような場合に特段の事情が認められました。

(東麗子「減収が無い場合の逸失利益算定の認定傾向について」交通事故相談ニュース47号2頁参照)

  ・昇進や昇給に不利益が生じるおそれ

  ・具体的な業務への支障

  ・転職

  ・本人の努力(具体的に)

  ・周囲の助力

 このほかにも事案に応じた要素が検討されますので、これに限らないでしょう。

どのくらいの額が認められるの?

 特段の事情が認められれば、後遺障害認定どおりの逸失利益が認められる場合もあれば、それより減額して認める裁判例も多いようです。

頑張りをみとめてもらおう

 このように、実際には収入が減少していなくても、その努力を裁判所が認めてくれる場合があるのです。

交通事故の逸失利益がとれないとあきらめないで、自分や周囲の努力、将来への不安などをアピールしましょう。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

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