このコラムのまとめ
- リフォーム工事の建築請負契約において,しばしば契約書が作成されないことがある。そのため,施主と業者との間で認識や主張にちがいが生じて紛争となることも。
- 裁判所は,取り交わされた書面等を基に,その工事で一般的な技術基準や標準仕様等も考慮して定めるとする(東京地判令和元年12月5日)。
- 仮に高額な費用の掛かる工事でも標準的な工事として施工する義務を認められる可能性があるので,工務店側は,どのような工事を行うのかをあらかじめ明示すべき。
リフォーム工事は幅が広い
リフォーム工事と一口に言っても,その幅は広いです。
カーテンレールの取付もリフォーム工事でしょうし,壁の塗り替え,屋上の防水工事など大規模なものでもリフォーム工事でしょう。
リフォーム工事も建築請負契約なので,契約書を交わすべきです。しかし,小規模な仕事で一々契約書を作成するのは困難な場合もあり,現実には契約書を取り交わしていないリフォーム工事を見かけます。
工事の内容(工法)もピンからキリまで
ところで,同じ目的のリフォーム工事でも,それを実現する工法は様々です。
同じ目的の工法,例えば防水工事の工法にも,比較的安価な工法(ウレタン防水密着工法など)から,効果が高いが費用が高い工法(ウレタン防水通気緩衝工法など)まで様々なものがあります。
当然,施主としては,請負金額は決まっているので,より効果の高い工法を望みますし,業者は安い工法を予定した見積もり金額であれば高い費用がかかる工法は選びたくないでしょう。
契約書が無い場合,一体どのような工事が合意されていたと裁判所は認めるのでしょうか。
元の工事と関連しているかどうかが重要
この点について裁判所の考えを示した裁判例があります(東京地判令和元年12月5日)。
裁判所は,取り交わされた書面等を基に,その工事で一般的な技術基準や標準仕様等も考慮して定めるとするとしました。
施主と業者の間で,特別に工法を決めていたならば別ですが,そうでなければその工事で一般的な工法が採用されたとされます。
どういう工法なのかを資料に残すべき
裁判所にいくと,上記のように判断がされる可能性が高いです。しかし,これでは,当初は予算外でやる予定では無かった工事について,標準的な工法であるとして施工する義務が生じる可能性があります。その場合は,あらかじめ安い工法を予定して低く請負金額を出しているでしょうから,工務店側が持ち出しになる可能性が高いです。
そこで工務店側としては,少なくともメールや議事録などで工法を示し,証拠を残すべきでしょう。
反対に,施主としても,効果の高い工法を安くやってくれると信じて契約することもあるでしょう。その場合は,その工法を行うということが分かる資料(メールや議事録)をせめて残すべきですね。
この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。