家族信託の活用例ー貸している物件が空き家にならないか心配

1 大事な賃貸収入を

貸している物件が空き家にならないか心配

若い頃から働き続け,その結果,ご自身の資産として不動産(賃貸物件)をお持ちの方もおられるでしょう。

そして,賃貸経営もまた大変な事業です。物件の適切な管理により建物の価値を維持し,信用ある賃借人に貸し付け,賃料を確実に回収していく。文字で書けば簡単そうですが,実際には労力や経験を要する難しい仕事です。

特に,近年は,なかなか入居者が決まらない空き家が目立ってきています。空き家の恐怖は大家さんなら誰でも感じたことがあるのではないでしょうか。

苦労を重ねて育ててきた大切な資産ですから,できるかぎりご自身で管理していきたいとお思いでしょう。

2 まだ自分でできるうちに

一方,年齢とともに体力や判断力が衰えるのは自然の摂理です。

今はまだ自分の能力に自信があっても,いつかは自分で処理しきれなくなるときが来ます。

しかし,いざその時が来てしまったら,認知の状態によっては,もう自分では対策を取れないかもしれません。

今のうちに,いざことが起こったら信頼できる人に管理を任せられ,生活の心配をしなくてよいようにしたいですよね。

しかし,すでに述べたように,賃貸管理は簡単な仕事ではありません。信頼できて空室率を抑えられる人物はなかなかいないものです。仮にご親族で信頼できる人物であっても,賃貸業の能力がなければなりません。賃貸業の専門家に任せるのが最もよいのですが,相続と絡んで問題は複雑です。

この場合,信託を使えば一つの解決策を提示できます。

3 活用例

例えば,賃貸に出している不動産を信託財産とし,一般社団法人を設立して受託者とします。受益者として,ご自身を設定します。

一般社団法人の理事としてご自身が信託財産の管理に関与することで,現状をある程度維持します。一方で,もしもの場合には他の理事らが一般社団法人の業務を遂行できる体制を今から準備することができます。ご自身で事業を運営しながら,もしものための保険を準備する体制が信託なら可能です。

4 ご相談は経験ある弁護士に

信託は,とても柔軟で強力なツールですが,万能ではありません。また,信託の設計,設定は簡単ではありません。そして,税務上の問題は常に考慮しなければなりません。 

信託を利用する場合,信託の経験があり,なおかつ家族の抱える悩みに真摯に向き合って,知恵を絞る,そんな専門家である弁護士が求められます。ご自身の悩みが信託で解決できるか分からない,そんな方でもまずはご相談ください。一緒に解決策を考えましょう。

執筆:弁護士 田村裕樹  2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。

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