遺産相続において,遺言書がある場合の流れです。
1 遺言書の種類
遺言書には以下のような種類があります。
遺言書には,普通方式と特別方式があります。
普通方式には,以下の3種があります。
- 自筆遺言証書
- 秘密遺言証書
- 公正遺言証書
特別方式には以下の2種があります。
- 危急時遺言
- 隔絶地遺言
特別方式は,命の危機が迫っているなどの特別な場合に利用できるものです。
通常は,普通方式での遺言書が作成されるでしょう。
2 遺言書の発見
遺言がある場合,まずは遺言を発見することが必要です。
公正証書遺言は,公証役場にて保管されているため,全国の公証役場で遺言検索が可能です(平成元年以降作成に限る,昭和以前作成の遺言書は当該作成された役場でのみ検索可能)。
一方で,自筆証書遺言などは,遺族があらかじめその所在を知っていたり,遺品整理時に見つかったり,貸金庫から発見されることがあります。
3 遺言書の保管制度
自筆証書遺言は,遺言者の死亡後にその真正等が争われることが多々あります。
こうしたトラブルを軽減するため,法務局で自筆証書遺言を保管する制度が開始しました。
4 遺言書の検認
遺言書を発見した場合,勝手に開封してはいけません(もちろん,最初から封緘されていないものもありますが,封緘してなくて必ずしも無効になるわけではありません)。
遺言書を保管あるいは発見した者は,家庭裁判所に検認の申立をすることになっています(民1004条1項)。
ただし,公正証書遺言および遺言書保管所に保管されている遺言書は検認する必要がありません。
5 遺言書による遺産分割
遺言書に無効事由がなく,また相続人全員で他の内容の遺産分割協議が成立するのでなければ,遺言書に基づいて遺産分割が行われます。遺言書で遺言執行者が指定されている場合などは,遺言執行者がその実務を進めます。遺言の内容によっては,遺言執行者の指定が無い場合でも,裁判所に遺言執行者を選任してもらう必要が生じます。
遺言書がある場合には,受遺者は,他の相続人の同意を得ることなく単独で預金口座や不動産の相続手続を取ることができます。
6 遺言書の内容などに争いがある場合
遺言書が様式違反であったり,偽造されたなどの理由で相続人間で争いが生じることがあります。
その場合は,遺言無効について調停や訴訟において争うことになります。
執筆:弁護士 田村裕樹 2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。