建物明渡請求について

1 現代は総大家さん時代

建物明渡請求について

昭和の中頃まで,大家さんというのは誰でもなれるものではありませんでした。

当時は不動産を所有するというのは大変な財力であり,また平均的な家庭の収入や財産はとても不動産を所有できるものではなかったため,限られたお金持ちだけが大家さんでした。

時は流れて令和の現代において,大家さん,つまり賃貸業は極めて一般化しました。

もちろん,先祖代々の地主さんや大家さんも多いのですが,不労所得を得る手段として喧伝されたこともあり,サラリーマン大家さんも珍しくなくなりました。もちろん,以前から,転勤などによって住まなくなった自宅を賃貸に出す方も多かったのですが,より投資物件としてお持ちになる方が多くなりました。

2 賃料滞納は大家さんの最大のピンチ

一方で,不動産への投資は,利回りのある金融商品への投資ほど「手間がかからない」ものではありません。

金融資産ならば,キャピタルゲインを狙うのでなければ,利益は(実現するかはともかく)ほっておいても払われます。

しかし,賃貸業はそうではありません。入居者に入ってもらい,賃料を回収することは自分でやらなければなりません。

そして,建物の賃貸をしている大家さんにとって,入居者から家賃が入らなくなるのは最も困ることです。

なぜなら,大家さんは家賃を得ることを前提に,ローン支払いや固定資産税,メンテナンス費用など様々な経費を負担しています。大家さんだからといって,少々家賃が入らなくても困らない,という方はいないでしょう。

3 まずは正常への回復を

賃貸業という事業の側面からみると,家賃をきちんと払ってもらえる状態への回復が最も重要です。

一方,家賃は,借主の収入が少々減っても,他の支払に優先して支払われるのが普通です。家賃を払えないというのは,収入が相当減少したということです。つまり,家賃の滞納に至った借主が,今後家賃の支払いを改善する可能性は小さいといえます。

そのため,家賃を滞納した借主との契約を解消し,明渡を受けて,新たに「きちんと支払ってくれる」借主と契約するのが多くの場合最善の策となります。

4 早めに弁護士に相談を

事業を継続していくためには,状況を静観していてはいけません。

何ヶ月も,何年も放置してしまっては,解決できるものもできません。

家賃が支払われないのは異常事態です。そう簡単に正常化しないことがほとんどです。事業には損切りの判断が重要ですが,この点は経験が必要です。早めに弁護士に相談し,「損して得取れ」を実行してください。

執筆:弁護士 田村裕樹  2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。

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