家族信託の活用例ー病気や認知症への不安

1 病気や認知症への不安

病気や認知症への不安

今はまだ,ご自身や親御さんがお元気で,自ら財産を管理されている方が多いでしょう。特に最近は,定年年齢の引き上げや再雇用制度の法整備など,元気に稼働できる高齢者がたくさんいることを前提にした社会制度が整ってきています。

そんな元気な高齢者が多数いる一方,年齢を重ねることによって,病気が生じたり,また認知能力に不安が生じたりするのは避けがたいことです。

2 信託によって,自分の未来を自分で決められる

今は元気でも,将来病気になったり,認知の問題がでたらどうなるのでしょうか。

例えば,将来,認知能力の問題で成年後見などの手続が取られれば,財産の管理は成年後見人が行ってくれます。

しかし,自身の能力に問題が生じた後ですので,誰が後見開始の申立てをするのか,誰が成年後見人になるのかなどは,将来執られる手続での判断に委ねられます。

一方,信託であれば,まだご自身の判断能力があるうちに,自ら希望する形で将来のことを決められるのです。

3 活用例

例えば,父親が今は元気だが,将来,認知症になり財産の管理を自分でできなくなった場合に,委託者を父親,受託者を息子,受益者を父親とする信託契約を結ぶことが考えられます。

受託者となるべく一般社団法人を設立することで,財産の管理などがより明確となり,また自然人と異なり死亡によって消滅しませんので,継続性が高まります。

4 後見制度支援信託

また,成年後見制度を利用した場合でも,近時は信託が利用されています。

被後見人の財産のうち,老人ホームなど日常的な支払は後見人が預貯金として管理し,それ以外の金銭は信託財産として銀行に預けるのが後見制度支援信託です。信託財産は預金保険制度の保護対象であり,また,この銀行にある信託財産の引き出しには家庭裁判所の指示書が必要になりますので,信託財産の費消といったリスクの大部分を担保することができます(東京家庭裁判所では,被後見人に五〇〇万円以上の流動資産がある場合は,後見制度支援信託の検討対象としています)。

5 ご相談は経験ある弁護士に

信託は,とても柔軟で強力なツールですが,万能ではありません。また,信託の設計,設定は簡単ではありません。また,税務上の問題は常に考慮しなければなりません。 

信託を利用する場合,信託の経験があり,なおかつ家族の抱える悩みに真摯に向き合って,知恵を絞る,そんな専門家である弁護士が求められます。ご自身の悩みが信託で解決できるか分からない,そんな方でもまずはご相談ください。一緒に解決策を考えましょう。

執筆:弁護士 田村裕樹  2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。

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