税法に強い弁護士の選び方

1 税法に詳しい弁護士は少ない?

ここまで,税法の素養がある弁護士の重要性について述べてきました。

ここで,「あれ?弁護士って法律の専門家だから,みんな税法に詳しいんじゃないの?」と疑問に思うかもしれません。

しかし,弁護士の資格を得るための試験である司法試験の内容を知れば,この疑問も解決します。

司法試験において,かつて税法は試験科目ではありませんでした。

現在でも,選択科目の一つとして一部の受験生のみが税法(租税法)を学んでいます。また,租税法の試験範囲は,所得税法とそれに関係する限度で法人税法および国税通則法が出題されるのみと限定されています。

このため,弁護士は基本的に実務に入って初めて税法に触れる者が多いといえます。

かく言う私も,司法試験の勉強においては税法を全く学んでいませんでした(そのため,弁護士になってから税法務の大学院にて勉強・研究しました)。

2 税額計算ができる必要は無い

一方で,弁護士が,普段税理士の先生がされている会計業務や申告業務を行う必要はないと考えます。

もちろん,ワンストップサービスを標榜される事務所であれば,一定のメリットはあると思います。

一方で,税額計算のような税理士の先生が普段から培われている業務のノウハウは,普段から税理士として活動していない多くの弁護士にとって通常業務との関連性がなく,生産性は高まりません。

むしろ税理士の先生が処理されたほうが(すでに設備投資もされているため)効率的ですし,多くの事例を積み重ねられたことによる経験量もあります(こうした経験値は大変重要であると考えます)。やはり「餅は餅屋」です。

3 税法の本質を理解していること

大事なのは,弁護士が税法の本質的な部分を理解していることです。

専門的には,制度趣旨であったり,他の税法も含む全体像,すなわち税務体系そのものであったり,そうした税法の本質(いいかえれば税法務のエッセンスでしょうか)をつかんでいることが,事件処理の方針決定などに極めて重要な役割を果たします。

4 税理士と同じ言語を使えるか

税法の本質を理解していることとともに重要なのは,税理士の先生との意思疎通です。

言い換えれば,税理士と同じ言語を使えるか,ということです。

税法務において一般的に使用されている用語や制度を理解し,また各種税法の大きな枠組みを捉えていることで,税理士の先生との打ち合わせもスムーズに進みます。

税法に詳しい弁護士が税理士と協働することで,より効率的に案件を解決に導けるでしょう。

執筆:弁護士 田村裕樹  2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。

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