建物明渡請求を検討すべきタイミング

1 まずは賃料がちゃんと払われているかを毎月確認しよう

建物明渡請求を検討すべきタイミング

建物明渡を検討すべきタイミングとして,ここでは賃料滞納の場合を想定して解説します。

大家さんは賃貸業という事業を営んでいます。

事業である以上,事態の推移を常に把握し,早期に対応することが大事です。賃貸業に限らず,事業運営の鉄則といえます。

仮に長期の滞納を放置していた場合,裁判になってから,裁判所に「なぜこんなにも放置していたのか。」などの疑念を持たれかねません。

そもそも,家賃はいの一番に払われることが多い,後回しにされにくい債権です。それが滞るという事態は,借主の信用状態に相当な不安が生じている可能性があります。

仮に家賃が支払われないまま借主に居続けられると,大家さんにとって大きな損失となります。

また,時間が経てば立つほど信用状態が悪化し,回収可能性が減少するのが通常です。待っていても事態が改善することはないでしょう。

2 1か月でも遅れたら督促する

たとえ1回,1か月分であっても,遅れたら借主に支払を督促すべきです。

また,民法改正によって,保証人に対する履行状況の通知義務が規定されました。条文上は,保証人からの請求が無い限りは通知義務はありません。

一方,連帯保証人からの通知請求がない場合でも,借主が継続的に支払を怠っているにもかかわらず,貸主が保証人に通知せず,いたずらに契約を更新させている場合には保証債務の履行請求が信義則に反するとした判例があります(最判平成9年11 月13日,更新後の債務についての連帯保証義務についての判示において,例外的に信義則に反する場合として言及したものです。)。

この判例を踏まえると,保証人の請求がない場合でも,保証人に対して借主の遅滞の情報を伝えるべきでしょう。

3 2か月目には弁護士に相談しよう

1か月遅れた時点で請求して,さらに2か月目も遅滞したとなると,借主の収入が相当に減少している可能性が高いです。

そして,貸家の場合,3か月分の賃料滞納で解除できる可能性があります。

次の3ヶ月目の支払遅滞を見据えて,2か月の滞納の時点で建物明渡を検討しましょう。そして,2か月の時点で弁護士に相談すべきです。

この時点ではまだ解除は成り立たない可能性が高いですが,あらかじめ相談しておくことで,後の解除の手続がスムーズになります(逆に,相談が遅れるとスムーズな解除ができない可能性があります)。

4 3か月滞納後には催告し,解除も

3か月分の滞納が生じたら,催告し,払われなければ解除することが考えられます。

5 借地は全く別です

なお,借地の地代未払いについては,裁判実務は借地人にかなり寛容です。ただし個別の事情によりますので,解除をお考えの大家さんは弁護士に相談してください。

執筆:弁護士 田村裕樹  2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。

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