このコラムのまとめ
- 令和3年の品確法,住宅瑕疵担保履行確保法改正がいよいよ施行される。
- 令和4年10月1日から,瑕疵担保履行制度の対象が,瑕疵保険に加入した中古住宅にも拡大される。
- 住宅紛争処理制度の利用が充実し,時効の完成猶予効が与えられるが,取り下げると効果を得られないので注意すべき。
住宅瑕疵担保履行制度とは家を買う時の安心を提供する制度
家を買うというのは極めて大きな買物ですよね。誰しも失敗したくないと思うものです。
家は大規模で複雑な構造物ですから,その全てを理解して確かめて買うことは,一般人には無理です。
つまり,みんな一定のリスクを抱えたまま,家を購入せざるを得ません。
一方,あまりに怖がって家を買えないとすれば,それは不幸なことですし,また家を作って売るという産業に関わっている人にも不利益です。
そこで,新築住宅の欠陥を直す責任(瑕疵担保責任)を定め,その実現の為の視力を確保する(主として保険の加入)制度である住宅瑕疵担保履行制度を設けました。
そして,保険加入した紛争について,住宅紛争処理制度を設置して,円滑に紛争処理できるようにしています。この制度は,専門家が関与して解決に向けて話し合える上に,手数料が1万円程度であり,極めて安価に利用できます。
改正による強化ポイントとは?
このような住宅の瑕疵担保履行制度が,令和3年の法改正によって強化されます。
今までは,瑕疵保険に加入した新築住宅のみが対象でした。
令和4年10月1日から,これを瑕疵保険に加入した中古住宅も対象となることになります。
また,住宅紛争処理によって時効の完成猶予効が付与されますので(令和3年9月30日施行),時効完成間近でも,裁判所では無く住宅紛争処理制度(ADR)を選ぶことが可能になりました。
拡大対象となる保険の種類
今回拡大される保険は,既存住宅等に係る瑕疵による損害を填補する為の任意保険で,2号保険と言われています。
2号保険は任意保険であり,様々な商品がありますが大きく二つの種類があります。
一つは,リフォーム瑕疵保険や大規模修繕瑕疵保険などの請負契約タイプ。もう一つは宅建業者または個人間の中古住宅売買における瑕疵保険である売買契約タイプがあります。
特に,宅建業者による既存住宅売買に関する瑕疵保険が近年大幅に伸びています。
時効の完成猶予効の注意!取下では効果が無い
あっせんや調停が打ち切られた場合は,通知を受けて1か月以内に提訴すれば,時効の完成猶予については,あっせん又は調停の申請の時に訴えの提起があったものとみなされます。
しかし,申請人が取り下げたり,そもそも不当な目的の申請として調停がされなかった場合には該当しないので注意しましょう。
また,そもそもADRの目的となった請求と,裁判上の請求が同じなのかどうかは事案ごとに裁判所が判断することになりますので,念のため注意しましょう。
この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。