1 まずは早めに動くこと
家賃滞納者への対応は大家さんにとって気が重い仕事でしょう。一方で,賃貸業は事業ですから,ある程度は仕事として受け入れざるを得ません。
ここでは,家賃滞納者への対応の心構えを解説します。
まず,家賃滞納に対しては,常に,早めに動くことが大事です。
そもそも,家賃はいの一番に払われることが多い,後回しにされにくい債権です。それが滞るのは信用状態に相当な不安が生じている可能性があります。家賃を支払われないままに居続けられると,唯一の収入源である賃料が入らないことになりますから,大家さんにとって大きな損失となります。
時間が経てば立つほど信用状態が悪化し,回収可能性が減少することが多いため,待っていても良いことはないでしょう。
2 滞納者と話す努力
気が重いかも知れませんが,滞納している借主と話しをして事情を聞きましょう。
対面で話すことのメリットがいくつかあります。
まず,督促を面と向かって行うことで,借主に支払への心理的プレッシャーをかけられます。
また,滞納した事情を聞いて,借主の経済状態に関する情報収集ができます。例えば,解雇されて収入途絶,再就職先が決まっていないなどの情報があれば,回収可能性が極めて低く,かつ今後も家賃滞納が続いて損害が拡大する恐れが高い,など今後の見通しを得ることもできます。
要するに,情報によって,回収に力をいれるべきか,退去させる方向に努力するべきかが判断できます。
滞納者と話をすること自体は,大家さんがご自分でもできるでしょう。
一方,話すことで何を得るのか(何を知るべきなのか),その情報から今後どういう手続や提案をすべきかを判断しなければ意味がありません。弁護士ならば適切な立ち回りをした上で,よりよい判断をアドバイスできるでしょう。
3 滞納者と会うことができない場合
滞納している借主と会えないことも多いです。
話しをできないなら,淡々と手続を進めるしかありません。
その場合,最終的な執行を見据えて手続を踏んでいくべきです。
弁護士ならば適切な立ち回りをした上で,よりよい判断をアドバイスできるでしょう。
4 ダラダラしては損害が拡大する
繰り返しますが,家賃は最も重要な支払と考えられており,その滞納はよっぽど収入が減少している可能性があります。
仮に遅滞を一旦解消しても,それはどこかから穴埋めして無理しただけの場合がしばしばあります。そして,再度すぐに滞納になってしまうことがあります。
冷静に状況を見極めて,早めに動いていく決断が重要です。
執筆:弁護士 田村裕樹 2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。