1 今までの寄与分は相続人のみ
被相続人の財産維持等に特別の貢献をした人には、相続において一定の分配があるべきです。
それが寄与分と言われる制度です。
ところが、この制度は、相続人にしか適用されませんでした。
2 長男の嫁の介護に報いる
ステレオタイプなかつての日本の家では、長男の嫁が義理の親を介護するという風景がありました。
実際に、大きな労力をかけて義理の親の介護をしても、この貢献は相続において反映されませんでした。
これは長男の嫁には酷であり、面倒を見ない方が相続分は同じで楽できることになってしまいます。つまり「親の面倒は見た者負け」という極めて不都合な現実を生み出すものです。
そこで、平成三〇年度民法改正により、特別寄与料(民法1050条1項)という制度が規定されました(令和元年7月1日から施行)。
3 特別寄与の要件
特別寄与料の要件を以下の全てを満たす場合です。
①被相続人の相続人以外の親族であること
②被相続人に対して無償で療養看護その他の労務提供し、その結果、財産の維持または増加をさせること
③特別の寄与であること
特別寄与料の請求には期限があります。請求の期限は、相続の開始及び相続人を知った時から6ヶ月です(民法1050条2項但書)。または相続開始の時から1年で裁判による請求ができなくなります(除斥期間)。
この請求は家庭裁判所に行います。協議がすぐにまとまらないときは、迅速に家庭裁判所に申し立てましょう。
なお、従来の寄与分制度には消滅時効は無かったのですが、令和3年民法改正により、10年経過後は法定相続分で行うというルールができましたので(新民法904条の3)、寄与分も、本改正施行後には相続開始後10年という期限が生じますのでご注意ください。
この特別の寄与にあたるには、通常の貢献では足りないなど、一定のハードルはありますが、これでいわゆる長男の嫁の貢献を正当に評価できることになります。
執筆:弁護士 田村裕樹 2022年1月時点の法令・解釈等に基づいています。