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管理組合が間違った契約しちゃった?消費者として取り消しできる?!弁護士が解説

2022-09-30

このコラムのまとめ

  • 管理組合は,以前から住民によって運営されてきたため,専門性の高い契約に関して知識が少ない事が多い。
  • 管理組合は実態としては素人であっても,消費者には当たらないという裁判例あり。
  • 分からないことは専門家(マンション管理士や弁護士)に相談してから行うべき。

管理組合は住民が運営

 マンションの管理組合は,区分所有者である住民によって組織されます。

 そして,管理組合の運営は選ばれた理事によってされます。理事は基本的に区分所有者のなかから選ばれます。

 第三者管理以外では,理事会で管理組合の様々な契約の内容を検討したり,組合に諮って契約を締結したりします。大変なご苦労ですよね。

 管理組合の理事は単にそのマンションの住民というだけですので,マンションの管理について詳しい人もいるでしょうが,ほとんどの場合,はじめはみなさん素人でしょう(理事として経験を積まれて,みなさん詳しくなっていかれます)。

 大規模修繕工事の請負工事契約や,電気の受給契約,ネット環境の一括契約など,マンション管理にかかわる様々な専門的な契約が理事の方の前に現れてきます。その当否を判断することは簡単ではありません。

 ましてや,管理組合の理事は他にお仕事をされていることが多く,仕事終わりや休日に集まって検討するなど厳しい状況の中で尽力されています。

 そんな管理組合が,間違った契約を結んで損をしてしまった場合,実質的に決定した理事達は素人なのだから,消費者契約法で取り消したり,無効になったりしないのでしょうか。

消費者契約法による取り消しや無効

 消費者契約法とは,素人である消費者が,プロである業者と知識量や経験の差によって不利益を被る場合に,契約を取り消したり,不利益な約束を無効にしたりできる法律です(消費者契約法1条)。

 例えば,重要な事項について事実と異なることを告げて契約したり(第4条1項1号),消費者にとって不利益な事実を告げなかったために誤認したり(同条2項),そうした場合に契約を取り消すことができるとしています。

 また,事業者に対する損害賠償請求権を免除させるような不利益な条項などは無効となります(8条各号)。

 管理組合も,大規模で専門的な契約について,よく分からずに契約してしまって不利益を被った場合,消費者契約法の適用を受けて契約を取り消したり無効に出来ないでしょうか

管理組合は消費者か

 そもそも消費者契約法の適用を受けるのは,消費者だけです。

 消費者とは何かにつき,消費者契約法に明確に定義があります。

 消費者契約法2条1項には,「「消費者」とは、個人(事業として又は事業のために契約の当事者となる場合におけるものを除く。)をいう。」と明確に規定されています。

 そうです。消費者とは個人であると明確に規定されていて,団体である管理組合は消費者には当たらないのです(東京地裁判決平成22年11月9日)。

 管理組合がマンション住民という個人の利益を守る為に存在する団体であり,理事も「素人」から選任されているとしても,団体である管理組合には消費者契約法は適用されないこととなります(消費者契約法逐条解説も同様)。

マンションの専門家への事前相談が重要

 結論として,管理組合は消費者にあたらないので,消費者契約法によって契約を取り消したり無効にしたりはできません。

 しかし,管理組合の理事が(少なくとも始めは)素人であることは否めません。

 そのため,重要で大規模な契約を行う場合には,前もってその内容の妥当性をマンション管理の専門家(弁護士やマンション管理士など)に相談するのが重要です。転ばぬ先の杖として,ぜひマンション管理の専門家をご活用ください!


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

これからは中古住宅も紛争処理制度が使える!住宅品質確保法・住宅瑕疵担保履行確保法の令和3年改正がいよいよ施行されます。弁護士が解説

2022-09-16

このコラムのまとめ

  • 令和3年の品確法,住宅瑕疵担保履行確保法改正がいよいよ施行される。
  • 令和4年10月1日から,瑕疵担保履行制度の対象が,瑕疵保険に加入した中古住宅にも拡大される。
  • 住宅紛争処理制度の利用が充実し,時効の完成猶予効が与えられるが,取り下げると効果を得られないので注意すべき。

住宅瑕疵担保履行制度とは家を買う時の安心を提供する制度

 家を買うというのは極めて大きな買物ですよね。誰しも失敗したくないと思うものです。

 家は大規模で複雑な構造物ですから,その全てを理解して確かめて買うことは,一般人には無理です。

 つまり,みんな一定のリスクを抱えたまま,家を購入せざるを得ません。

 一方,あまりに怖がって家を買えないとすれば,それは不幸なことですし,また家を作って売るという産業に関わっている人にも不利益です。

 そこで,新築住宅の欠陥を直す責任(瑕疵担保責任)を定め,その実現の為の視力を確保する(主として保険の加入)制度である住宅瑕疵担保履行制度を設けました。

 そして,保険加入した紛争について,住宅紛争処理制度を設置して,円滑に紛争処理できるようにしています。この制度は,専門家が関与して解決に向けて話し合える上に,手数料が1万円程度であり,極めて安価に利用できます。

改正による強化ポイントとは?

 このような住宅の瑕疵担保履行制度が,令和3年の法改正によって強化されます。

 今までは,瑕疵保険に加入した新築住宅のみが対象でした。

 令和4年10月1日から,これを瑕疵保険に加入した中古住宅も対象となることになります。

 また,住宅紛争処理によって時効の完成猶予効が付与されますので(令和3年9月30日施行),時効完成間近でも,裁判所では無く住宅紛争処理制度(ADR)を選ぶことが可能になりました。

拡大対象となる保険の種類

 今回拡大される保険は,既存住宅等に係る瑕疵による損害を填補する為の任意保険で,2号保険と言われています。

 2号保険は任意保険であり,様々な商品がありますが大きく二つの種類があります。

 一つは,リフォーム瑕疵保険や大規模修繕瑕疵保険などの請負契約タイプ。もう一つは宅建業者または個人間の中古住宅売買における瑕疵保険である売買契約タイプがあります。

 特に,宅建業者による既存住宅売買に関する瑕疵保険が近年大幅に伸びています。

時効の完成猶予効の注意!取下では効果が無い

 あっせんや調停が打ち切られた場合は,通知を受けて1か月以内に提訴すれば,時効の完成猶予については,あっせん又は調停の申請の時に訴えの提起があったものとみなされます。

 しかし,申請人が取り下げたり,そもそも不当な目的の申請として調停がされなかった場合には該当しないので注意しましょう。

 また,そもそもADRの目的となった請求と,裁判上の請求が同じなのかどうかは事案ごとに裁判所が判断することになりますので,念のため注意しましょう。


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

急にピアノが弾けない!細則の変更でも「特別の影響」で承認が必要か?弁護士が解説

2022-04-08
急にピアノが弾けない!細則の変更でも「特別の影響」で承認が必要か?弁護士が解説

このコラムのまとめ

  • マンションの規約の設定変更等には,区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会決議が必要。
  • また,その変更等によって特別の影響を受ける区分所有者の承諾も必要になる。
  • 特別の影響を受けるかどうかは,マンションごとの事情を丁寧に検討する必要がある。

急にピアノを弾いてはいけなくなった

 マンションでは,様々な方が住んでいます。

 中には,ピアノが弾きたくて入居した方もいるでしょう。

 今まで認められていたピアノの演奏が,夜8時以降は禁止されてしまったら、当然ですがとても困った状況になります。

 マンションで突然そのようなルールが出来た場合,ピアニストとしては何か反論できるでしょうか。

規約変更による「特別の影響」

 マンションの規約を設定,変更等する場合,区分所有者および議決権の各4分の3以上の多数による集会決議が必要です(区分31①)。

 4分の3以上の賛成というのはそもそも大きなハードルです。

 さらに,31条1項後段は,その規約変更等が「一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべき時は,その承諾を得なければならない。」とされています。

 つまり、規約変更等には,特別の影響を受ける区分所有者の承諾まで必要なのです

 どういう場合に「特別の影響」があると言えるのでしょうか。裁判所では,「規約の設定,変更等の必要性及び合理性とこれによって一部の区分所有者が受ける不利益とを比較衡量し,当該区分所有関係の実態に照らして,その不利益が区分所有者の受忍すべき限度を超えると認められる場合をいう」とされています。

 まとめると,特別の影響はないとして規約変更等が有効となる要件は,①規約を変更等する必要性があること,②規約の変更に合理性があること,③変更等による不利益が受忍限度内であること,であるといえます。

 反対に,上記①から③の一つでも満たさない場合には,特別の影響を受ける者の承諾が必要です。

規約の変更ではなく,使用細則の設定・変更ならどうか?

 ところで,ピアノの演奏に関する規制などは、通常,管理規約自体では無く,その下位規範といえる「使用細則」にて規定されることが多いでしょう。

 通常,使用細則の設定・変更については,総会の過半数で決議されています。

 使用細則の設定・変更の場合,規約自体ではないため,上記の区分31条1項の適用は無く,過半数で決められるし,特別の影響を受ける者の承諾も不要であるようにも思われます。

 この点,楽器の演奏時間を夜8時までとする細則を過半数決議かつ承諾無しで行ったことの有効性が争われた東京地裁令和2年6月2日判決(以下「本件判決」といいます。)では,以下のように判断しました。

 まず,細則における楽器の演奏禁止の条項設定は,必ずしも規約で行うことが法律上求められていません。そのため,細則で演奏禁止を設定したこと,これを過半数決議で行ったことは,区分31条1項前段に違反しないとしました。

 一般的に,楽器の演奏時間の制限などは使用細則で設定されることが多く,この点では常識的な判断といえましょう。

 では,使用細則の設定は規約の変更等ではないのだから,特別の影響を受ける者の承諾も不要でしょうか。

 この点では,裁判所は,たとえ使用細則であったとしても,区分31条1項後段を類推適用して,利害の調査性を図るべきだと判断しました(最高裁平成10年10月30日第二小法廷判決・ 民集52巻7号1604頁参照)。

特別の影響があったか

 特別の影響があるかどうかは,個々の事案によって異なってきます。

 まず,ルールを設定する必要性は,マンションごとに違うでしょう。一般的に,騒音を生じかねない楽器の演奏時間についてなんらかの制限を設けることは,必要性が認められやすいでしょう。

 次にルールの合理性ですが,一般的な演奏時間を十分確保したものであれば,合理的であると認められる場合もあるでしょう。

 しかし,この点こそまさにマンションごとに千差万別なのです。

 本件判決では,マンション自体がコーポラティブマンション(入居者が組合を作って,自分たちの要望に添ったマンションを建築するもの)であり,遮音性や防音性能にこだわって,演奏が自由に出来ることを前提に設計施工されたものでした。そうした事情から,竣工当初から楽器の演奏が容認されていました。また,竣工後も,騒音の苦情がでるたびに多額の費用をかけて追加の防音工事を行っていました。

 また,夜8時までの演奏とすると,一般的な社会人は家に帰るまでに8時を過ぎることもあるでしょうから,必ずしも演奏する人に配慮した時間設定とは言えません。

 そもそも,音量について考慮すること無く一律に演奏を禁止する内容でもあります。

 こうしたことから,本件判決では,使用細則を設定した総会決議の合理性が否定されました。

 さらに,本件判決では,原告がプロのピアニストであったこと,さらに趣味のフルートでもレッスンを受けていたこと,当初は自由に演奏できていたこと,防音工事に多額の費用をかけたこと,などを指摘して,演奏を制限されることの不利益が大きいと判断しました。

 結論として,本件判決では,「特別の影響を及ぼすべきとき」にあたるとし,原告の承認を得ていない総会決議は無効であるとしました。

個別のマンションごとに検討することが重要

 本件判決では,コーポラティブマンションであったこと,当初から自由に演奏できたこと,プロのピアニストであったことなど,様々な特別な事情がありました。なので,「演奏禁止の使用細則の設定がいつでも特別の影響を及ぼすべきとき」にあたる」というわけではありません。

 特別の影響を受けるかどうかは,マンションの個別事情,ルールの規定ぶりなど具体的な事実を検討して判断する必要があります


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

ADRでも時効をストップ!住宅紛争審査会がさらに便利に!弁護士が解説

2022-03-11

このコラムの要約

 住宅に関する紛争を解決する手段としてADRである住宅紛争審査会があります。

 手軽に利用できるこの制度ですが、令和3年の改正で、①住宅紛争手続でも時効の完成猶予効が付与されます。

 また、②対象が拡大され、住宅リフォームやマンションの大規模修繕の瑕疵保険も対象となります。

 より選択しやすい制度となったADR、住宅紛争審査会のご利用については、お近くの弁護士会にご相談ください。

住宅トラブルの解決に手軽なADR

 建築のミスや代金を巡るトラブルなど、住宅に関する紛争は数多く発生しています。

 トラブルを解決するための最終手段は裁判です。しかし、それよりも簡単に、「ちゃんとした人のちゃんとした意見」を聞ければお互い納得できることがありますよね。

 そうした要請に応える、裁判では無いけどもトラブルを解決するための手続、ADRが近年充実しています。

 各弁護士会が運営している住宅紛争審査会も、住宅紛争を解決する代表的なADRで、比較的活発に利用されている手続です。

消滅時効が止まらない!ADRの問題

 以前から、住宅紛争審査会によるあっせんや調停の手続では、消滅時効が問題となっていました。

 欠陥住宅による損害も権利である以上、いつかは消滅時効が完成して、請求できなくなってしまいます。

 時効の進行を止めるには、訴訟の提起、裁判所に訴えることが必要です。一旦提訴すれば、時効の進行は止まり(民法147条1項)、判決なりで最終的に解決されることになります。

 一方、ADRである住宅紛争審査会の手続は裁判と同じような機能を果たすのですが、住宅紛争審査会にあっせんや調停を申し立てても消滅時効の進行は止まりませんでした。

 そのため、時効の完成間近の事件では、ADRを利用することができず、はじめから訴訟を選択したり、手続途中に時効がせまってきた場合は別途時効完成猶予の合意を取り付けたりせざるを得ませんでした。

住紛でも消滅時効がストップするように!

 こうした不便を解決するため、令和3年5月28日に住宅品確法および住宅瑕疵担保履行法が改正され、住宅紛争手続においても時効をストップする効果(完成猶予効)が発生するようになりました。

 具体的には、住宅紛争審査会への手続開始時に時効が完成していなければ、その手続が解決の見込みなしとして不成立におわった後1か月以内に裁判所に提訴すれば、ADRの手続申請時に訴えの提起があったとみなされるため、時効完成後の提訴でも消滅時効に関わらないようになりました(ざっくり書いたので、より詳細な規定は品確法73条の2、保険付き新築住宅に関する住宅瑕疵担保履行法第33条2項を参照)。

 この改正の施行日は令和3年9月30日です。すでに係属中の事件にも適用されます(改正法付則第3条、第4条)。

 ただし,時効の完成猶予効が生じる範囲について,ADRの目的となった請求内容と,訴訟上の請求が同一なのかどうかで問題が生じることもあるでしょう(請求の特定)。同一なのかどうかは裁判所が事案ごとに判断することになります。

住宅リフォームも対象!

 また、今まで対象では無かった住宅リフォーム(瑕疵保険)やマンションの大規模修繕(瑕疵保険)、既存住宅瑕疵保険も対象になりました。

 ADRの利用は各瑕疵保険への加入が条件となりますが、いずれも工事発注時に業者に加入を求めることで解消が見込まれます。

住宅紛争処理手続のために4月以内の期間で訴訟手続を中断することが可能に

 すでに訴訟で争っている事案でも,当事者双方が共同で申し立てれば,裁判所は訴訟を一時中断して住宅紛争処理手続に委ねることができるようになりました(品確法73条の3)。その期間は4か月以内です。

 これによって,既に訴訟になっていても紛争処理手続が使えることになり,より柔軟な解決ができるようになります。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

老朽化マンションを建て替えろ!政府が建替えに必要な要件緩和を検討!でも実は敷地売却が重要!?弁護士が解説

2022-03-04

マンションの建替えは難しい

 地震を筆頭に、災害の多い我が国日本。そのため建物の強靱化は極めて重要な課題です。

 特に耐震性能の不足するマンションは、これまでずっと建替えの必要性が叫ばれてきました。

 しかし、マンションの区分所有という特殊性が、建替えを阻んできた歴史がありました。

マンションはみんなで所有しているので、みんなで決めなければならない

 マンションはその特徴として、建物を住民みんなで所有しています。

 詳しく言うと、各部屋(「専有部分」といいます)はそれぞれの持ち物ですが、廊下やエレベーターなどみんなで使う部分(「共用部分」といいます)はみんなで所有しています。

 共用部分を含む建替工事は、基本的には全員一致で決めなければなりません。

 しかしそれではあまりに面倒なので、区分所有法は総区分所有者の5分の4の賛成で建て替えられるとし、要件を緩和しています。

 なお、建替えをあきらめて敷地ごと売り払って分配しようとすると、民法の原則に戻って、全員一致でないとできません。なお,耐震性がない,あるいは外壁等の剥落により危害が生じる恐れのあるマンションは要除却認定対象となって5分の4での合意に緩和されています。

 建替えの賛成数が緩和されたとはいえ、5分の4の賛成を得るのは簡単ではないです。要除却認定されてもやはり5分の4の賛成が必要です。

 そのため、多くの建替えるべきマンションにおいて、住民間で建替えの機運が高まっても、あえなく頓挫してきました。

マンションのスラム化

 近年、建物の老朽化にともない、マンションの所有者が不在となっている場合があります。

 住民全員で所有しているというマンションの特性上、建物の管理およびその費用は区分所有者が負担します。

 ですので、人がいなくなる(区分所有者自身はどこかに存在しているのですが、管理に参加したり管理費を支払わなかったりする状態です)ことは、マンションの管理状態に悪影響を与えます。

 人がいなくなると、管理費が足りなくなったり、管理組合が運営できなくなったりして、建物のメンテナンスが滞り、悪化した住環境を嫌ってさらに住民が離れます。

 こうしてマンションのスラム化が進行してしまいます。

 さらに、相続が発生して、現在の所有者が誰なのか分からないこともあります。

 このようなスラムマンションは、客観的には建替えの必要性は高いのですが、建替えの同意は取れるでしょうか。建替えに対する元々厳しい5分の4以上の賛成数が、不在者がいることでさらにクリアが厳しくなります。

 スラム化によって、事態の解決がどんどん遠くなっていますね。

賛成数を4分の3に引き下げ

 こうした状況に鑑み、政府はマンション建替えの賛成要件を4分の3に引き下げる方向で検討しているとの報道がありました。

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA112K70R11C21A1000000/?n_cid=NMAIL007_20211210_A&unlock=1

 これにより、主に賛成要件で滞っていた建替手続が促進されることになると思います。

問題は建替資金

 実は、賛成要件を多少引き下げても、いまだ建替えの最も大きな障害が残っています。

 それは、建替えの資金です。

 マンションの建替えは、あたらしい建物を建てるのですから、当然に莫大な建築費がかかります。

 建築費を住民全員で負担するとしても、要するに新築マンションを買うようなものですので、何千万ものあらたな出費(場合によっては住宅ローンを組む必要があるでしょう)をしなければなりません。建替えには簡単に賛成できないのです。

 では今までの建替えはどうやって資金を賄っていたかというと、建物を今までよりも大きく建て替えて、新しくできた部屋(「余剰床」と言われています)を販売することで、従前からの区分所有者の立替費用を賄ったり、低く抑えたりしてきたのがほとんどです。

 これは、建物の建築条件(建ぺい率や容積率など)が竣工当時よりも緩和され、より高い建物、広い建物が建てられるマンションの建替えであることが前提条件になります。

 こうしたマンションであれば、従来の区分所有者は、究極的にはタダで新しいマンションに住み替えられるわけですから、住民はみんな建替えに賛成します。

 今までデベロッパーが行ってきた建替えはこうした比較的「イージー」な案件でした。

 しかし、建て替えても余剰床がほとんどない、あるいは全く無い、さらには耐震性能を確保するために部屋が今までより小さくなるといった「ハード」な案件は建替えがすすまずに残されてしまっているわけです。

敷地売却が出口になるかも

 今回、政府は敷地売却についても4分の3の賛成で可能とする方向で改正しようとしているようです。

 敷地売却は、従来、全員一致でないとできなかったことです。

 上記の建替資金の問題がクリアできないならば、危険な建物が存在することを解決するには、建物を取り壊して敷地を売却するしかありません。

 今回、政府が敷地売却の要件を緩和してきましたが、私はこちらが本命なのではないかと思います。

 さらに、不明者を賛否のカウントからはずすことも検討しているようですので、敷地売却はかなりやりやすくなる可能性があります(ただし、不明者については改正されない可能性もあるでしょう)。

 ご自身の所有するマンションの行く末を案じておられる方は、ぜひ法改正の動向を注目してください。


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マンション管理の適正化!令和2年改正法を弁護士が解説

2022-02-25
マンション管理の適正化!令和2年改正法を弁護士が解説

このコラムのまとめ

  • 1 マンション管理適正化法が令和2年に改正され,令和4年4月1日から施行されます。
  • 2 マンション管理適正化推進計画制度ができました。
  • 3 管理計画認定制度ができました。
  • 4 市区等がマンション管理組合に助言・指導・勧告できるようになりました。

マンションの老朽化を防げ!マンション管理適正化法が改正

 戦後,マンションが特に都市部の主要な居住空間として発達してきました。

 一方,竣工後40年を超えるマンションも,現在既に100万戸以上あることが分かっており,これはマンションストック総数の実に15%を占めています。

 これらの高経年マンションは,外壁や躯体に多くの問題を生じやすい一方,住民の高齢化が進んで管理が行き届かないという悪循環にあります。

 こうした高経年マンションの管理を良くするため,マンション管理適正化法が令和2年に改正され,令和4年4月1日から施行されます。

管理適正化推進計画

 まず,市区等は,国の定めたマンション管理適正化指針に基づいて,マンション管理適正化推進計画を定めることができることになりました。これは地域独自の事情を汲んだものとすることができます。

マンションの管理計画認定制度

 次に,推進計画を定めた地方公共団体は,一定の基準を満たすマンションの管理計画を認定することができます。

 個々のマンション管理組合が自治体に管理計画の認定を申請し,これが通れば,管理の優良なマンションとしてお墨付きを得ることができます。具体的メリットとしても,リフォーム融資で金利の引き下げ措置を行うことが検討されています(フラット35)。

管理の適正化のために市区等が助言・指導・勧告することに

 また,自治体は,マンション管理の適正化のために助言・指導し,不適切管理に対しては勧告を出せることとなりました。

 例えば,総会が開催されていない,管理者等が定められていない,管理規約が存在しない,管理費と修繕積立金の分別管理ができていない,そもそも修繕積立金がないなどの場合が対象に考えられます。

 ご自身の所有するマンションの管理に頭を悩まされておられる方は多いでしょう。今回の改正は,適正な管理に対してインセンティブを与え,かつ不適切管理を厳しく扱うものです。今改正を適正管理へのきっかけとして頂ければと思います。

 気になる点がありましたら,ぜひお気軽にご相談ください。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

アツマロマガジンにて法律相談「迷惑すぎ!ゴミ出しルール違反」を監修

2021-11-12

 マンション住民のポータルサイト「アツマロマガジン」において,「マンション住民のための法律講座&相談」の記事の監修をしています。

 連載第7回目は,「迷惑すぎ!ゴミ出しルール違反」です。

 マンションには複数人が住んでいる以上,生活上のルールを守りあって済む必要があります。

 特にゴミ出しは面倒だったり匂いがしたりして、生活する上でのストレスになりがちです。

 小さな問題も放置しておくと大きな不満につながることがあります。

 法律で解決しにくい問題こそ,マンションの問題の真髄ともいえましょう。ぜひ,管理組合理事の方など,ゴミ出しルールでお悩みの方に見て頂きたいです。

アツマロマガジンにて法律相談「駐車場に不審な車がとまっている……」を監修

2021-11-03

 マンション住民のポータルサイト「アツマロマガジン」において,「マンション住民のための法律講座&相談」の記事の監修をしています。

 連載第6回目は,「駐車場に不審な車がとまっている・・・」です。

 マンションの駐車場は、外に開放されている部分だけに、不審車両などが気になるところです。

 また、駐車場の利用については、住民間でもトラブルが起きがちです。

 さらに、近年は駐車場の利用が減り、コスト面から廃止を検討するマンションも増えています。

 上記の場合の手続は、決して居室に比べて簡単というわけではありません。ぜひ,管理組合理事の方など,駐車場でお悩みの方に見て頂きたいです。

アツマロマガジンにて法律相談「下の部屋で水漏れ発生。加害者になってしまった?」を監修

2021-10-15

 

 マンション住民のポータルサイト「アツマロマガジン」において,「マンション住民のための法律講座&相談」の記事の監修をしています。

 連載第5回目は,「下の部屋で水漏れ発生。加害者になってしまった?」です。

 マンションは生活の場ですので,水も当然使います。生活に必要であるため,水漏れは避けて通れない問題の一つです。

 もちろんめったに起きる問題では無いですが,ひとたび問題が発生したらとても大きな損害が生じてしまうのが水漏れの怖いところ。

 被害者ははっきりしているのですが,加害者が誰なのかが分からなかったり,責任の押し付け合いが生じがちなトラブルでもあります。

 そして,真の救済のためには,保険を掛けることが一番大事だなと思います。ぜひ,管理組合理事の方など,住民トラブルにお悩みの方に見て頂きたいです。

記事ランキング1位!アツマロマガジンにて法律相談「何の音? 突然上の階から異様な物音がするようになった!」を監修

2021-10-01

 マンション住民のポータルサイト「アツマロマガジン」において,「マンション住民のための法律講座&相談」の記事の監修をしています。

 連載第3回目は,「何の音? 突然上の階から異様な物音がするようになった!」です。

 まさにマンションの定番問題!コロナ禍でステイホームされる方が多くなり、騒音のトラブルはさらに頻度が増しています。簡単そうに見えて、とても難しい「音」の問題。

 そんなとき,どうやって解決するのか,管理組合理事の方など,住民トラブルにお悩みの方必見です。

 同サイトの記事ランキング1位!(2021/9/29時点)

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