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サブリース契約の闇!不正融資事件に裁判所はどう判断するのか?弁護士が解説!

2021-11-19

1 かぼちゃの馬車事件

 数年前まで、TVCMを流すほど、長期の家賃保証を謳うサブリース会社が隆盛を誇りました。

 これは、金融緩和による金余り、相続税対策としてのアパート建設など、いくつかの追い風が作り出した(今思えば)一過性のブームでした。

 その後、こうしたサブリース事業は、収益性が悪化していきます。

 そして、世間の注目を浴びる事件が発生しました。

 登場人物は、シェアハウス「かぼちゃの馬車」(これを展開していたのはスマートデイズ社)およびこれに絡んで多額の融資を実行したスルガ銀行でした。

 かぼちゃの馬車事件は、スマートデイズ社がサブリース契約を行い、30年家賃保証、年間8%の利回り保証などを謳ってたくさんの投資家と契約していたところ、2018年ころには経営が行き詰まりました。

 スマートデイズ社との契約において、スルガ銀行から融資を受けて購入していた買主が多かったところ、ずさんな不正融資や実際の不動産価値に合わない高額の取引が多数行われていました。

 このような不適切な融資の数々は,世間からの批判を浴び,やがてスルガ銀行自体の経営を揺るがすものとなりました。

 2019年,かぼちゃの馬車事件の被害弁護団が,東京地裁にスルガ銀行との和解を求める調停を申し立てました。

 2020年、スルガ銀行は、被害弁護団との間で、融資対象不動産をスルガ銀行に譲渡することを条件に、債務と相殺する、いわゆる帳消しをすることで解決しました。

 なお、かぼちゃの馬車事件やレオパレス等の長期保証を謳ったサブリース会社の経営悪化による当初約束の反故が相次いだため、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が新設され、2021年6月から施行されました。

2 調停では無く,裁判で勝てるのか

 本件も、いわゆる家賃補償や価値の誤認によって不利益な契約を締結したと主張する買主兼借主が、不動産販売業者と銀行を訴えた事案です(令和2年7月17日 東京地裁平成30年(ワ)第36605号事件)。

 状況としては,上記かぼちゃの馬車事件と極めて似ています。

 この裁判例で、原告は、売主が価値を偽って詐欺した、スルガ銀行には信義則上返還義務を負わない,などと主張していました。

 上記のかぼちゃの馬車事件では調停による解決でしたが,こちらは裁判です。

 調停は,必ずしも法的な主張を立証しなくても,中間的な解決をはかることが可能です(あくまで合意すれば,ですが)。

 しかし,裁判となりますと,訴えた側(原告と言います)が法律の要件に合致する事実を主張し立証できて,はじめて判決で勝つことができます。

 結論から言うと,この裁判の判決では、原告の主張は概ねすべて斥けられました(裁判は借主が負けた,と言うことです)。

 調停による解決とは,正反対の帰結ですね。

 以下,詳しく見ていきましょう。

3 家賃保証を立証することが難しかった

 この裁判では,33年に及ぶ家賃保証をしたことを立証できるか,が一番の問題でした。

 この点について,裁判所は,家賃保証について書面で約束した契約書はなく,説明資料に書かれた収入もシミュレーションであって保証では無いと判断しました。

 なお,はじめの一年だけは家賃保証する合意があったことは,被告も認めています。

 以下,その部分の判決文を引用します。

 「原告は,被告P3が借入金の返済は本件不動産の賃料収入によって賄えるし仮に賄えなければ被告JCが不足分を補填すると偽った旨主張し,これに沿う供述をする一方(甲25,原告本人),被告P3は不足分の補填を約束したのは1年間に限る旨供述する(乙A10,被告P3本人)。前記認定事実によれば,被告JCが原告に示したキャッシュフロー書面は「シュミレーション」を示したものであり,そこに記載されている本件不動産の家賃収入の額はあくまで満室を想定したものであること,被告JCが約1年間不足分の家賃補填を行っていたがその後は行っていないこと,本件家賃保証覚書は原告が関与して作成されたものではないことが認められ,その他全証拠を精査しても,被告JCが家賃収入によって借入金の返済額を賄えることを約束したことや不足分につき無期限での補填を約束したことを裏付ける客観的な証拠は存しないことから,原告の上記主張は採用することができない(そもそも,上記キャッシュフロー書面では借入期間が33年間とされているが,そのような長期間にわたって借入金の返済不足分を全て補填するという重要な効果を生ずる合意が口頭により成立するというようなことは容易に想定しがたい。)」(傍線部は筆者)

 ポイントは,「33年もの長期に及ぶ家賃の保証(不足分の填補)という重大なことを,口頭で合意するなど普通はありえない」という判断です。

 なるほど、「建築さえすれば必ず満室分の家賃保証をします」なんて,一般的には、そんなうまい話があるわけがないですし「書面も無く長期の家賃保証などしない」というのは常識的な考えでしょう。

 なお、売主が審査時スルガ銀行に家賃保証する旨を記した覚書を差し入れていますが、これは売主が勝手に作成したものであって買主は作成に関与していないものだったようです。

 一方で、買主としては、証拠には残っていないとしても、少なくとも家賃保証を匂わされたという認識でしょうから、売主が家賃保証に関して書類を銀行に対しては作成していたのに、売主とは合意していないから、その家賃保証覚書は関係ない,という裁判所の判断はやや厳しいかなと思いました。

4 不動産投資は自己責任が原則

 そもそも,不動産投資は難しい取引です。

 今でこそサラリーマン大家さんなど副業としての大家さんも増えました。

 しかし,不動産投資はそもそも投資額が高く,回収に長期間を要するものですので,短期的な取引よりも難易度が格段に上がります。

 ちょっと勧められたからやってみる,という種類の取引ではないのです。

 そして,投資のリターンを得る者は,そのリスクも自分で引き受けることが求められます。いわゆる自己責任原則です。

 上記裁判例における裁判所の判断にも、「投資を行う者は、その価値を自分で判断して取引し,自らその責任を負う」という自己責任原則が、色濃く影響していると感じます。

 ですので,スルガ銀行と被害弁護団との和解内容は,かなり異例のものです(スルガ銀行の落ち度が相当程度あったからこそです)。

 不動産取引での損失について,いつでも救済されるわけではありませんので十分にご注意ください。

 

 そこで、譲渡する会社との契約関係を基礎として、譲り受ける会社の株主の保護のための一定の規制を付与した株式交付制度が新設されました。これによって、現物出資規制を受けることなく、他の会社の株式の一部を取得できるようになりました(改正法2条32の2号、774条の3以降)。


 この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

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