建物明渡の強制執行

1 強制執行とは

建物明渡請求訴訟で勝訴判決を得た後,実際に明渡を実現するためにはどうすればよいのでしょうか。

もちろん,任意で合意して明渡を受けることもあります。しかし,話し合いができない,まとまらない場合は,いわゆる強制執行をすることになります。

建物明渡の強制執行とは,執行官に執行を申し立てて,占有者を強制的に立ち退かせ,対象物件の占有を取り戻すことです。

2 強制執行手続の流れ

(1)債務名義の取得

まず,執行の前提として,債務名義の取得が必要です。債務名義とは,簡単に言うと執行を許可する文書のことです。代表的な債務名義として,確定判決があります。

強制執行手続の流れ

(2)任意の交渉

債務名義の取得と並行して,明渡を受けられるよう話し合うことが大事です。

強制執行手続の流れ

(3)執行官への強制執行申立

債務名義を取得したら,対象物件が所在する場所を管轄する裁判所の執行官に対して建物明渡の強制執行手続を申し立てます。なお,債務名義以外にもいくつかの文書が必要になることが通常です(執行文や送達証明書など)。

申立て後,指定された保管金を予納します。

強制執行手続の流れ

(4)催告

まず,執行官と協議し,催告日を調整します。

催告日当日は,通常,申立人代理人弁護士が立会い,債務者が不在でも解錠して入室し,催告の公示書を掲示します(多くの場合,解錠のために鍵屋さんに来てもらいます)。

公示書には断行日(概ね催告日の1か月後)が設定され記載されます。

強制執行手続の流れ

(5)断行までの交渉

催告日に確認した状態を元に,業者に断行した場合の費用を見積もってもらいます(この時点で,強制執行にかかる費用が明らかになります)。

また,引き続き断行日までに明渡するよう入居者に交渉します。

強制執行手続の流れ

(6)断行

最終的に明渡の断行を行います。断行当日,解錠して業者(執行補助者)が荷物を運び出します。これによって,占有を回復して明渡となります。なお,運び出された荷物は一旦保管され,引き取りが無い場合は売却または廃棄されます。

3 目的は退去させること

以上のように執行手続は複雑であり,イレギュラーな事態もまま生じますので,弁護士への依頼をお勧めします。

重要なのは,目的はあくまで明渡であるということです。あきらめずに退去するよう交渉することも大事です。例えば,今まで話しがつかなかったが,催告後に話が付いて自主的に退去した,そうした事案も少なくありません。

最終的には,断行によって占有を取り戻すことが可能になります。それでも,諦めずに交渉に取り組む姿勢が重要です。

執筆:弁護士 田村裕樹  2021年7月時点の法令・解釈等に基づいています。

お問い合わせフォーム

 

ページの上部へ戻る

keyboard_arrow_up

0362733708電話番号リンク 問い合わせバナー