1 せっかくの死後事務委任契約・・・相続人が解除できる?
せっかく結んだ死後事務委任契約ですが,もし自分が死んだ後に,相続人によって解除されてしまわないか,心配ですよね。
でも民法では,相続人は被相続人である依頼者の地位を承継しますので,本人として解除(民651条1項)できるように思えます。
2 相続人であっても死後事務委任契約は解除できない(原則)!
この点が争われた東高判平成21年12月21日では,死後事務委任契約は,特段の事情が無い限り,地位を継承した相続人であっても委任契約を解除して終了させることはできない趣旨の契約であると判断しました。
つまり,相続人であっても死後事務委任契約を解除することは出来ません。
3 でも解除できる場合もある
ここで,相続人が解除できる場合(特段の事情)はなんでしょうか。
判決が示した基準はかなり曖昧です。
- ①契約内容が不明確又は実現困難
- ②委任者の地位を承継した者にとって履行負担が過重(相続人にとって負担が重すぎるという意味)
このような,契約を履行することが不合理な場合です。
どのような契約内容であれば解除(あるいは無効に)されないか,弁護士と相談しながら決めていきましょう。
執筆:弁護士 田村裕樹 2023年1月時点の法令・解釈等に基づいています。