Posts Tagged ‘過失’

これはピサの斜塔か・・・?!めっちゃ傾いている建物を買ってしまった!弁護士が解説

2022-11-11

このコラムのまとめ

  • 中古住宅の購入において,建物自体に明らかな傾斜があった場合に,それが隠れた瑕疵にあたるのか。
  • 内見したときに分かるのでは無いか。また,重要事項説明にも傾斜発見と記載がある。そのような場合に「隠れている」と言えるのか。
  • 裁判所は,内見はごく短時間であること,荷物が散在していて分かりにくかったこと,床の傾きの告知と建物の傾斜とは同じではない(床だけが傾斜している可能性だってある)として,隠れた瑕疵にあたるとした(大阪地判平成15年11月26日)。
  • とはいえ,あえて売主に確認しなかったとして,買主による瑕疵担保責任に基づく請求は棄却した。

中古住宅を買うときは慎重に

 人口減・低成長の現代において,新築住宅を買うことは,かつての高度成長期と同じではありません。

 傾きが激しい場合,それは当然。

 一方で,不動産は,それぞれ全て違う物であることがその特徴となっています。

 (新築でも言えますが)中古住宅の場合,経年による劣化も当然ありますので,不動産それぞれの個性を十分に理解した上で購入しなければ,おもわぬ損害を被ることがあります。

中には傾いている建物も

 中古住宅にどんな欠点があるかはそれぞれですが,中には建物が傾いている場合もあります。

 傾いている建物は,生活に不便が生じるのは当然ですが,最悪の場合倒壊の危険があります。

 保険会社では,地震などで傾斜が1000分の18以上担った場合,全損扱いとされているようです。つまり,建物としては「終わっている」扱いです。

さすがに内見で分かるのでは?

 上記のような顕著な傾斜がある場合は,当然,建物の瑕疵にあたります。

 しかし,さすがに倒壊レベルの傾きがあれば,それこそピサの斜塔のように,あからさまに傾いているのでは無いか?と疑問に思いますよね。要するに,見れば分かる,と。

 建物の売買で内見をしないことはおよそ無いので,買主は当然建物を内見しているでしょう。その時に,傾きは明らかになっているのではないか,そのため「隠れた瑕疵」とはいえず,瑕疵担保責任(契約不適合責任)を追求できないのでは無いか,という疑問が生じます。

 この点について裁判所の考えを示した裁判例があります(大阪地判平成15年11月26日)。

 この裁判例では,買主は内見をしており,さらに傾きについて重要事項説明書に「床の傾斜発見」と記されていました。一方で,売主は傾斜について内見時には一切説明していなかったようです。

内見では短時間過ぎて分からない

 裁判所は,傾斜は,外からは一定の距離を取ってじっくり見ないと分からないこと,内見では買主は短時間しか建物内部などは見ることが出来ないこと,部屋の中に荷物がたくさんあったこと(荷物が無いフラットな床状態なら傾斜を認識しやすかったが)などから,容易に発見できないとして,隠れた瑕疵であると判断しました。

 一方で,あえて売主に確認しなかったという過失がある為,瑕疵担保責任に基づく請求は結局は棄却しました。

 反対に,売主側に対しては,傾斜について告知義務を認め,告知しなかったことは不法行為に当たるとして損害賠償義務を負わせました。

 最終的に,この不法行為に基づく損害賠償について,買主も過失があるとして過失相殺(買主1:売主2)をしました。

ちゃんと告知しよう

 売主側がこれほどの傾斜について説明しなかった真意は不明ですが,仮に隠したとしても,あとで裁判で負けるわけです。

 それならば,はじめから納得してもらって売った方が,結局は低コストだと思います。

 売る方も買う方も,重要説明が大事ですね。重要だけに。


この記事は、掲載時点の法律関係を前提として記載されています。法改正などにより、解釈適用に変更が生じる可能性がありますのでご注意ください。

keyboard_arrow_up

0362733708電話番号リンク 問い合わせバナー